愛犬の口臭が気になったり、歯の表面に黄色や茶色の汚れが付いていたりして、「歯磨きをしたほうがいいのかな」と気になっている飼い主もいるでしょう。

犬も人と同じように、歯の表面に歯垢がたまり、放置すると歯石や歯周病につながります。歯周病が進行すると、口臭や歯のぐらつきだけでなく、痛みで食事が取りにくくなることもあるため、日頃からのケアが大切です。

本記事では、犬に歯磨きが必要な理由をはじめ、正しい磨き方や頻度、歯磨きを嫌がる犬への慣らし方などを解説します。

犬に歯磨きが必要な理由

犬の歯磨きは、歯垢を取り除き、歯周病を予防するために行います。犬は虫歯になることが比較的少ない一方で、歯周病には注意が必要です。

歯周病は珍しい病気ではなく、3歳頃までに多くの犬が何らかの歯周病を抱えているとされています。見た目には大きな異常がなくても歯茎の内側で進行している場合があるため、口臭や歯石だけで判断しないことも大切です。

歯垢を放置すると歯石になる

犬の歯には、食べかすや口腔内の細菌などから「歯垢(プラーク)」が形成されます。歯垢はやわらかいため歯ブラシで取り除けますが、時間が経つと唾液中のミネラル成分と結びついて硬い歯石へ変化します。

一度できた歯石は、通常の歯磨きでは取り除けません。そのため、歯石になる前の歯垢を毎日のケアで落としていくことが重要です。

歯周病が進むと歯を失うこともある

歯垢の中にいる細菌によって歯茎に炎症が起こると、歯肉炎が生じます。さらに炎症が悪化すると、歯と歯茎の間にある歯周組織や歯を支える骨まで破壊される「歯周病」へと進んでしまいます。

重度になると歯がぐらついたり抜けたりするだけでなく、強い痛みから食事を取りにくくなることもあります。また、口腔内の細菌による慢性的な炎症は全身の健康にも影響する可能性があるため、口の中だけの問題として放置しないことが大切です。

犬の歯磨きの正しいやり方

犬の歯磨きでは、力を入れて歯の表面をこするのではなく、歯垢がたまりやすい歯と歯茎の境目を丁寧に磨くことがポイントです。

最初から口全体をきれいにしようとすると犬が嫌がりやすいため、短時間から始めて少しずつ磨ける範囲を広げていきましょう。

犬用の歯ブラシと歯磨きペーストを用意する

歯ブラシは、愛犬の口や歯の大きさに合ったものを選びます。ヘッドが大きすぎると奥歯まで届きにくいため、小型犬には小さめの歯ブラシが適しています。

歯磨きに慣れていない場合は、ガーゼや歯磨きシートを指に巻いて歯の表面に触れるところから始めても構いません。しかし、歯と歯茎の境目まで細かく磨くには、最終的には歯ブラシを使えるようになるのが理想です。

歯磨きペーストを使う場合は、必ず犬用を選びましょう。犬は口をすすいで吐き出すことができないため、人用の歯磨き粉は使用しないでください。

歯と歯茎の境目をやさしく磨く

歯ブラシは歯と歯茎の境目に当て、小刻みに動かします。強くこすると歯茎を傷つけることがあるため、毛先が軽く当たる程度の力で十分です。

犬は歯の外側に歯垢や歯石が付きやすいため、まずは唇を軽くめくり、外側から磨いていきます。とくに犬歯や奥歯は汚れが残りやすいので、意識して磨きましょう。

1回ですべての歯を磨けなくても問題ありません。「今日は右側、次は左側」のように分けながら、歯磨きそのものを習慣化することを優先しましょう。

犬の歯磨きの頻度は毎日が理想

犬の歯磨きは、できるだけ毎日行うのが理想です。歯垢は時間が経つと歯石へ変化し、歯ブラシでは除去できなくなるためです。

毎日の歯磨きが難しい場合は、まずは愛犬が無理なく受け入れられる頻度から始めましょう。週にまとめて長時間磨くよりも、短時間でも継続的に口に触れる習慣をつけるほうが、歯磨きへの抵抗感を減らしやすくなります。

また、歯磨きをする時間帯に厳密な決まりはありません。犬が落ち着いている時間を選び、飼い主にとっても続けやすいタイミングを決めておくと習慣化しやすいでしょう。

歯磨きを嫌がる犬への練習方法

歯磨きを嫌がる犬に、いきなり歯ブラシを口へ入れて磨こうとするのは避けましょう。一度怖い思いをすると、その後も口元を触らせてくれなくなる可能性があります。「口を触られること」から段階的に慣らしていくことが大切です。

まずは口元を触ることに慣らす

最初は、犬がリラックスしているときに頬や口の周りをやさしく触ります。嫌がらなければ唇を少しめくり、歯や歯茎に指で触れてみましょう。触らせてくれたら褒めたり、ごほうびを与えたりして、「口を触られると良いことがある」と覚えてもらいます。

嫌がった場合は無理に押さえつけず、犬が受け入れられる段階まで戻ることがポイントです。

ガーゼや歯磨きシートで歯に触れる

口元を触られることに慣れたら、指にガーゼや歯磨きシートを巻き、歯の表面をやさしくこすります。

最初は前歯や犬歯を数秒触るだけでも十分です。慣れてきたら徐々に奥歯まで触れるようにし、口の中に何かが入る感覚を覚えてもらいます。この段階でも嫌がらなければ、次に歯ブラシを使った練習へ進みます。

歯ブラシは短時間から始める

最初から何本もの歯を磨こうとせず、歯ブラシを歯に当てて1〜2本磨く程度から始めます。嫌がる前に終えて褒めることを繰り返し、少しずつ時間を延ばしていきましょう。

子犬の頃から口元を触る習慣をつけておくと、歯磨きを受け入れやすくなります。一方、成犬やシニア犬からでも練習は可能です。しかし、すでに歯周病などによる痛みがある場合は、口に触れられること自体を嫌がることがあります。

犬の歯に歯石が付いてしまった場合の対応

歯の表面に黄色や茶色の硬い歯石が付いている場合、歯磨きだけで元の状態に戻すことはできません。ここでは、犬の歯に歯石が付いてしまった場合の対応を紹介します。

自宅で無理に歯石を削らない

市販の器具などを使い、自宅で歯石を削り取ることはおすすめできません。犬が動いた拍子に歯茎や口の中を傷つけるおそれがあるほか、歯の表面を傷つける可能性もあります。

また、目に見える部分だけ歯石を取っても、歯茎の内側にある歯垢や歯石は残ります。見た目がきれいになっても、歯周病そのものを適切に治療できているとは限りません。

動物病院では麻酔下で歯石除去を行う

動物病院で本格的な歯科処置を行う際は、一般的に全身麻酔をかけた状態で口腔内を詳しく確認し、スケーラーなどを用いて歯石を除去します。必要に応じて歯周ポケットの確認や歯科レントゲンなどを行い、歯周病の程度に合わせて治療します。

全身麻酔に不安を感じる飼い主もいるでしょう。しかし、犬が動かない状態で歯茎の内側まで確認し、安全かつ適切に処置するためには麻酔が必要です。

なお、スケーリングを一度行えば、その後ずっと歯石が付かなくなるわけではありません。処置後も毎日の歯磨きを続け、新たな歯垢の付着を抑えることが重要です。

茶屋ヶ坂動物病院|歯科のご案内

定期的に犬の口の中をチェックすることが大切

歯周病は、飼い主から見える歯の表面だけで進行するわけではありません。歯茎の内側で炎症が進んでいることもあるため、自宅での歯磨きとあわせて口の中の変化を確認しておきましょう。次のような変化は、歯や歯茎に問題が起きているサインの可能性があります。

  • 口臭が以前より強くなった
  • 歯に黄色や茶色の歯石が付いている
  • 歯茎が赤い、腫れている
  • 歯磨きの際に出血する
  • 硬いものを食べなくなった
  • 食べ物を口から落とす
  • 片側だけで噛んでいる
  • 口元を触られるのを急に嫌がる

とくに小型犬は歯が密集しやすく、歯周病のリスクが高い傾向があります。日頃から口元を触る習慣があれば、こうした小さな変化にも気づきやすくなります。

犬の歯磨きに関するよくある質問

犬の歯磨きを始める際は、使う道具や始める時期について迷うこともあるでしょう。ここでは、犬の歯磨きに関するよくある質問に回答します。

Q1:歯磨きシートだけでも効果はありますか?

歯磨きシートでも、歯の表面に付いた歯垢を拭き取る効果は期待できます。一方で、歯と歯茎の境目や細かな部分まで磨くには、歯ブラシのほうが適しています。歯ブラシを嫌がる犬では、まず歯磨きシートから始め、徐々に歯ブラシへ慣らしていくとよいでしょう。

Q2:子犬のうちから歯磨きは必要ですか?

子犬の時期から口元を触られることに慣らしておくことをおすすめします。

乳歯から永久歯へ生え変わる時期は口の中が敏感になることもあるため、無理にしっかり磨く必要はありません。まずは唇をめくる、歯に触れる、歯ブラシを近づけるといった練習から始めると、その後の歯磨きを習慣化しやすいです。

Q3:シニア犬でも歯磨きを始められますか?

シニア犬になってからでも歯磨きを始めることはできます。

しかし、年齢を重ねた犬ではすでに歯周病が進行し、歯や歯茎に痛みがある場合があります。これまで口元を触らせていた犬が急に嫌がる場合や、歯茎から出血する場合は、無理に磨かず口腔内の状態を確認することが大切です。

Q4:歯磨きはいつ行うのがよいですか?

歯磨きをする時間帯に決まりはありません。愛犬が落ち着いていて、飼い主も時間に余裕があるタイミングを選びましょう。

毎日同じ時間帯に行うと生活の一部として覚えやすくなります。散歩後や寝る前など、それぞれの家庭で続けやすいタイミングを決めるのがおすすめです。

Q5:デンタルガムだけで歯磨きの代わりになりますか?

デンタルガムは口腔ケアの補助にはなりますが、歯ブラシによる歯磨きとまったく同じ役割を果たすものではありません。

製品によって期待できる効果も異なるため、デンタルガムだけに頼るのではなく、可能な範囲で歯磨きと組み合わせて使用しましょう。

犬の歯磨きを習慣にして歯周病を予防しよう

犬の歯磨きは、歯垢を取り除き、歯石や歯周病を予防するための大切な習慣です。理想は毎日ですが、最初から完璧に磨こうとする必要はありません。まずは口元を触るところから始め、愛犬が受け入れられるペースで少しずつ慣らしていきましょう。

すでに硬い歯石が付いている場合は、歯磨きだけで取り除くことはできません。口臭や歯茎の腫れ、出血、食べにくそうな様子などが見られる場合も含め、口の中の状態に合わせたケアを行うことが大切です。

毎日の歯磨きと定期的な口腔チェックを続け、愛犬の歯を健康な状態に保ちましょう。