猫の寿命は、愛猫家にとって気になるテーマのひとつです。食事や生活環境、日々の健康管理など、飼い主の心がけひとつで猫の健康状態は大きく変わります。

本記事では、猫の寿命に関わる主な要素や、猫が健やかに過ごすための工夫、高齢猫への接し方などを詳しく解説します。

猫の平均寿命はどれくらい?

猫とできるだけ長く一緒に過ごしたいと願う飼い主にとって、猫の平均寿命は気になるポイントです。ここでは、「室内飼い」と「外飼い」での寿命の違いや、猫の寿命が延びている背景について紹介します。

  • 「室内飼い」と「外飼い」の違い
  • 猫の寿命は延びている

「室内飼い」と「外飼い」の違い

猫の平均寿命は、飼育環境によって大きく異なります。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2024年の室内飼いの猫の平均寿命は16.34歳、外に出る猫は14.24歳とされています。

外飼いの猫は交通事故や食中毒、感染症などのリスクが高く、比較的短命になりやすい傾向があります。一方、完全室内飼いの猫は野良猫とのケンカや病気、交通事故のリスクが低く、外飼いの猫に比べて長生きしやすいのが特徴です。

猫の寿命は延びている

猫の寿命はここ数十年で大きく延びており、長寿化が進んでいます。実際に、2000年時点での平均寿命は7.9歳であったのに対し、2020年には15.4歳と約2倍にまで伸びました。背景には、ペットフードの栄養バランスの向上や、医療の進歩、そして飼い主の健康意識の高まりなどがあると考えられています。

さらに、シニア期のケアや予防医療が広く普及したことも、猫の長寿に大きく貢献しています。愛猫に定期的な健康診断を受けさせている飼い主が増え、病気の早期発見・早期治療を可能にしているのです。

猫の寿命を左右する要因とは?

猫の寿命はさまざまな要素によって左右されます。できるだけ長く健康に過ごしてもらうためには、適切な飼育や日々のケアを心がけることが大切です。

ここでは、猫の寿命に影響を与える主なポイントを3つご紹介します。

  • 品種による違い
  • 避妊・去勢手術の有無
  • 生活環境

品種による違い

猫の寿命にはさまざまな要因が関係していますが、中でも品種の違いは大きな要素のひとつです。たとえば、バーミーズやバーマンは比較的長寿で、平均寿命は14年以上といわれています。対して、スフィンクスのように心臓病などの疾患を抱えやすい品種では平均寿命が短くなる傾向があります。


また、雑種の猫は特定の遺伝的疾患を引き継ぎにくいため、長生きするケースが多いとされています。ミックスについても、品種の組み合わせ方によっては遺伝の影響を受けにくいことがあり、安定した健康状態が期待できます。

避妊・去勢手術の有無

避妊・去勢手術の有無も猫の寿命に影響を与えることがわかっています。手術を行うことで、子宮や精巣の病気、乳腺腫瘍、ウイルス感染などのリスクを軽減できるほか、発情期のストレスやケンカによるケガの防止にもつながります。

2022年に発表されたカリフォルニア大学の研究では、不妊手術を受けた猫は、そうでない猫に比べて、オスでは6年、メスでは9年も長生きしていたという驚きの結果も出ており、健康・寿命の両面で大きなメリットがあるといえるでしょう。

生活環境

猫の寿命には、生活環境も大きく関わっています。先述の通り、完全室内飼いの猫は、外飼いの猫に比べて交通事故や感染症、ケンカなどのリスクが少なく、平均寿命が長くなる傾向にあります。

また、適切な温度管理がされている室内では体調を崩しにくく、安心して過ごせることも健康維持につながります。このように、快適で安全な生活環境を整えることは、猫がストレスなく長生きするための重要なポイントです。

猫の寿命を延ばすためにできること

猫と少しでも長く健やかに暮らすためには、体のケアはもちろんのこと、食事や生活環境などの管理が大切です。

ここでは、猫の寿命を延ばすために飼い主ができることを、具体的にご紹介します。

  • 定期的な健康診断を受ける
  • 年齢に応じた食事管理をする
  • 快適な環境を整える

定期的な健康診断を受ける

猫の寿命を延ばすためには、定期的な健康診断を受けることが重要です。猫は体調不良を隠す傾向があるため、病気の早期発見には獣医師による診察が欠かせません。

健康診断では、血液検査や尿検査、レントゲン、超音波などを通じて、体の状態を詳しく調べることができます。1歳を過ぎたら年1回を目安に、定期的な診察を受けるようにしましょう。

また、高齢の猫や持病のある猫は必要に応じて受診の頻度を増やすことをおすすめします。

年齢に応じた食事管理をする

年齢に応じた食事管理も、猫の寿命を延ばすためには大切な要素です。子猫には成長を支える高栄養のフード、成猫には体重や活動量に合った食事、シニア猫には消化のしやすさや水分補給に配慮した食事が適しています。

また、食事の質だけでなく、量も重要です。一般的な目安としては、体重1kgあたり約80キロカロリーが適正とされますが、体型や生活環境に応じて必要なエネルギー量は異なります。

個体の特性やライフステージに合わせた適切な栄養管理が、健康寿命を延ばすカギといえるでしょう。

快適な環境を整える

快適な環境を整えることも、猫の長生きにつながります。運動不足を防ぐには、キャットタワーやおもちゃを活用し、自由に体を動かせる空間を確保しましょう。安心して過ごせる場所として、隠れ家のような静かなスペースを用意するのも効果的です。

さらに、トイレを清潔に保ったり、爪とぎができる場所を設けたりすることで、猫が持っている自然な習性を無理なく行えるようになります。

また、猫は自由気ままな性格の動物です。過度なスキンシップを避けて適度な距離感を保つことも、ストレスの軽減に役立ちます。

高齢猫のケアと向き合い方

高齢猫の健康と快適な暮らしを支えるには、加齢による変化を理解し、適切なケアを心がけることが大事です。ここでは、シニア期に見られる主な変化や、日常生活で気をつけたいポイントについてご紹介します。

  • シニア期に見られる変化
  • 高齢猫をケアする際のポイント

シニア期に見られる変化

猫がシニア期に入ると、活動量の低下や筋力の衰え、食欲の減退といった変化が見られるようになります。毛並みの乱れ、白髪の増加など見た目にも変化が起き、歯や歯茎の状態が悪くなる、爪が伸びやすくなる、ひげが薄くなるなど、さまざまな部分に加齢の影響が表れてきます。

さらに、夜鳴きをする、トイレを失敗する、性格が変わるなどの症状は、認知機能が低下しているサインの可能性があります。そのような兆候が見られる場合は、念のため獣医師の診察を受けたほうがよいでしょう。

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高齢猫をケアする際のポイント

高齢猫と暮らすうえで大切なのは、体の変化に合わせた細やかなケアです。筋力が低下して移動が難しくなることもあるため、ベッドやトイレの配置を見直し、動きやすい環境づくりを意識しましょう。

爪や被毛の手入れ、水分摂取のサポートも欠かせません。柔らかいフードへの切り替えや水飲み場の増設など、猫にとって負担の少ない工夫を取り入れ、無理のない範囲でケアを続けていくことが重要です。

猫の寿命を延ばすためにできること

猫の寿命は、飼育環境や日々のケアによって大きく左右されます。食事の管理や健康診断、環境の整備など、飼い主の心がけが健康寿命を支える要となります。

また、猫も人間と同じで、高齢期には体の変化が起こりやすくなり、状況に応じて無理のないケアを続けることが大切です。小さな工夫や気配りを忘れずに、愛猫との大切な時間を過ごしていきましょう。