猫が理由もなく鳴き続ける「無駄鳴き」は、多くの飼い主が抱える悩みの1つです。その背景には空腹やストレス、体調不良など、猫からの大切なサインが隠れている場合もあります。
適切に対応するためには、鳴き声の種類や行動から気持ちを読み取り、原因を正しく見極めることが大切です。
本記事では、猫が無駄鳴きをする主な理由や対処法、鳴き方から分かる感情の読み取り方を詳しく解説します。
猫の無駄鳴きとは
猫の無駄鳴きは、特に理由が思い当たらないにもかかわらず、猫が繰り返し鳴き続ける状態を指します。短時間で何度も声を発したり、普段より大きな声で鳴いたりするなど、日常の発声とは異なる持続性や頻度の高さが特徴です。
特に夜間の大声や、目的が達成された後も続く鳴き声は、日常生活の中でも気になりやすい行動といえます。単なるわがままと決めつけず、猫からのサインとして受け止め、原因を丁寧に見極める姿勢が大切です。
猫の無駄鳴きの原因

鳴き声は猫にとって大切なコミュニケーション手段であり、日常の要求から不安や体調の異変まで、さまざまなサインを示している場合があります。ここでは、猫の無駄鳴きの主な原因を紹介します。
- お腹がすいている
- 飼い主に構ってほしい
- ストレスを感じている
- 発情期を迎えている
- 体調が悪い
- 体の病気を抱えている(高齢猫の場合)
お腹がすいている
猫が無駄鳴きをする理由の1つに「お腹がすいている」ことが挙げられます。
猫は一度に多くの量を食べないため、気づかないうちに与えた餌を全て食べきっていることもあります。空腹が続くと、飼い主に「ごはんがほしい」と知らせるために鳴くことが多く、決まった時間に声を上げたり、ごはん用のお皿の前で鳴き続けたりします。
飼い主に構ってほしい
猫の無駄鳴きには、「構ってほしい」という気持ちが隠れている場合もあります。
猫は眠っている時間が長い一方、起きている間は飼い主との触れ合いを求めることも多いものです。留守がちだったり遊びの時間が足りなかったりすると、寂しさや退屈を紛らわせようと鳴き声でアピールする傾向が見られます。
ストレスを感じている
ストレスも、猫が無駄鳴きをする原因になり得ます。引っ越しなどの環境の変化があったり、十分に遊べない・甘えられない状況が続いたりすると、不満や不安が高まり、鳴くことで気持ちを発散しようとします。
中でも、低く強い声で鳴き続けている際は不快感を示している可能性が高いとされています。留守が多い家庭では、飼い主と離れる時間が長くなるほど不安が増して、鳴き声が激しくなるケースも多いようです。
発情期を迎えている
去勢・避妊手術をしていない猫が発情期を迎えると、無駄鳴きが増えることがあります。特にメスは発情期の声が大きく、赤ちゃんの泣き声のような鳴き方を繰り返すことがあり、夜間は音が響きやすいため注意が必要です。
オスには発情期がないものの、発情中のメスの声やフェロモンに反応して強い声で鳴き続けることがあります。
体調が悪い
猫が無駄鳴きをする背景には、体調不良が隠れている場合もあります。無駄鳴きに加えて、普段より落ち着きがない、食欲が低下している、グルーミングが増えるといった変化が見られる場合は、病気の可能性も考慮した方がよいでしょう。
猫は自身の不調を隠す習性があるため、鳴いて訴えているときは苦しんでいるサインとも考えられます。いつもと違う鳴き方や行動が続く場合は、念のため動物病院で診察を受けることをおすすめします。
体の病気を抱えている(高齢猫の場合)
特にシニア期の猫では、行動学的な理由だけでなく、体の病気が原因で鳴き続けてしまうケースも非常に多く見られます。 以下のような疾患は、“夜鳴き”の主原因として頻繁に確認されます。
甲状腺機能亢進症
代謝が異常に高まり、落ち着きがなくなる・よく鳴く・夜間に動き回るといった症状が出やすくなります。
高血圧症
不安感や興奮、頭部の違和感などにつながり、突然鳴き出す、夜に大声で鳴くといった行動が現れます。
慢性腎臓病による不快感
脱水・吐き気・だるさなどが続くことで、猫が落ち着かず、鳴いて訴える場合があります。
認知症(猫の認知機能不全:FCD)
高齢猫に多く、夜間の徘徊や大声での夜鳴き、飼い主がいないと不安になって叫ぶように鳴くといった行動が典型的です。
関節痛
高齢猫では関節炎が非常に多く、痛みが原因で夜間に動きたがらない・落ち着かない・鳴くといった変化が生じることがあります。
感覚低下(視力・聴力低下)
暗い場所で周囲が見えにくい・聞こえにくい不安から、猫が鳴いて助けを求めるような行動が増えることがあります。
これらの病気は血液検査や血圧測定で見つけられることが多く、治療により夜鳴きが改善するケースも少なくありません。「突然夜に鳴き始めた」「高齢になって鳴き声が増えた」などの変化があるときは、行動の問題と決めつけず、一度動物病院で健康チェックを受けることをおすすめします。
茶屋ヶ坂動物病院|総合診療科のご案内猫が無駄鳴きをする場合の対処法は?

猫の無駄鳴きを改善するためには、原因に応じた適切な対処が必要です。
- 要求を満たしてあげる
- 無視をする
- 去勢・避妊手術をする
要求を満たしてあげる
猫が何かを求めて鳴いている場合は、欲求を満たすことで無駄鳴きを抑えられる可能性があります。食事の時間を整え、トイレや水場を清潔な状態にしておくほか、猫が安心して過ごせる環境を整えてあげることも大切です。
運動不足や退屈が原因で鳴くことも多いため、適度に遊ぶ時間を確保して、エネルギーやストレスを発散させましょう。深夜や早朝にごはんを催促して鳴く場合は、自動給餌器の利用を検討するのも選択肢の1つです。
無視をする
基本的な欲求が十分満たされているにもかかわらず無駄鳴きが続く場合は、思い切って無視することが有効な場合もあります。鳴けば構ってもらえる、要求が通ると学習してしまうと、鳴き声がエスカレートするケースがあるためです。
猫が鳴いている最中は声をかけたり目を合わせたりせず、無視する姿勢を貫くことがポイントです。そして、静かになったタイミングで構ってあげることで、「鳴いても要求が通るわけではない」と理解させられます。
根気が必要な方法ですが、継続して行うことで鳴き癖の改善が期待できます。
去勢・避妊手術をする
去勢・避妊手術も、無駄鳴きの改善に効果的です。発情に伴う強い欲求や相手を求めるストレスが軽減されるため、猫が落ち着いて過ごしやすくなる効果が期待できます。
去勢・避妊手術には、オス・メスそれぞれに特有の病気を予防できるといった健康面でのメリットもあります。手術は一般的に生後半年頃から可能ですが、適切とされる時期は動物病院によっても異なるため、事前に相談して確認しておくと安心です。
猫の鳴き声から気持ちを読み取れる?

猫の鳴き声は、そのときの気持ちや状況を伝える大切なサインです。注意深く観察することで、猫が何を感じているのかを読み取れることもあります。
- 短く鳴く
- 伸ばし気味に鳴く
- 低めの声で強く鳴く
- 口を閉じて鳴く
短く鳴く
「ニャッ」「ウニャッ」といった短い声を発する場合は、飼い主への挨拶や返事を示していることがあります。一方で、声が強い、しっぽを激しく振っているといった場合は、不快感や警戒心を抱いているサインと考えられます。
伸ばし気味に鳴く
「ニャーン」「ミャーオ」など、少し伸ばすように鳴く場合は、要求や甘えの気持ちが込められていることが多いとされています。ご飯がほしい、遊んでほしいなど、何かを求めている場合によく見られる鳴き方です。
低めの声で強く鳴く
「ミャオーン」「ンナーオ」といった低めで力強い鳴き声は、強い要求や不安、不満を感じているサインです。落ち着かない様子で鳴き続ける場合は、何かに対して不快感を抱いている可能性が高いといえるでしょう。
また、目を大きく見開いていたり、耳が横に倒れる「イカ耳」の状態になっている際は、警戒心やストレスが高まっている状態だと考えられます。
口を閉じて鳴く
「ウー」「フー」と口を閉じたまま発する低い声は、相手を拒絶したり威嚇したりしている合図です。警戒心が高まっているときによく見られ、毛を逆立てる、しっぽを大きく膨らませるといった防御的な仕草が伴うこともあります。
このような状態の猫に無理に近づくと、さらに興奮させてしまう恐れがあるため、そっと距離を置いて落ち着くのを待つことが大切です。
まずは無駄鳴きの原因を理解しよう
猫の無駄鳴きには、空腹や甘え、ストレス、発情期、体調不良など、さまざまな理由が隠れています。無駄鳴きを単なる問題行動と捉えるのではなく、猫が何を伝えようとしているのかを理解することが大切です。
食事の与え方を工夫したり、必要なケアを行ったりすることで、猫は心穏やかに過ごせるようになります。愛猫が安心して暮らせるよう、日々の変化に気を配りながら最適な環境を整えてあげましょう。












