猫の爪切りをしないで放っておくと、爪が折れて猫自身がケガをしたり、鋭い爪で引っかかれて飼い主がケガをしたりする危険があるため、適切にケアする必要があります。しかし、中には「猫が爪切りを嫌がってしまう」「爪切りのコツがわからない」という理由で、適切な頻度で爪切りをできていないという方もいるのではないでしょうか。
今回は、猫の爪切りの適切な頻度や、爪切りの道具や手順、爪切りを嫌がる猫への対処法など、猫の爪切りについて獣医師がわかりやすく解説します。愛猫と飼い主の安全を守るためにも、適切なケア方法をしっかり理解しておきましょう。
猫の爪切りをしないとどうなる?

適切に猫の爪切りをしないと、以下のようなリスクがあります。
- 爪が割れてケガをする
- 巻き爪になって肉球に刺さる
- 猫の爪で飼い主がケガをする
- 家具や壁紙が損傷する
爪が割れて猫がケガをする
猫の爪は定期的に切らないと、古くなった爪の層が剥がれにくくなり、厚く硬くなります。その状態で高いところから飛び降りたり、激しく走ったりすると、爪が何かに引っかかって折れたり、根本から割れてしまったりするリスクが高いです。
爪が割れると、出血したり、ひどい場合には化膿することもあり、猫に痛みや不快感を与えてしまいます。爪の健康を守るためにも、定期的なケアが重要です。
巻き爪になって肉球に刺さる
爪を切らずに放置すると、爪が伸びすぎて円を描くように湾曲し、肉球に食い込んでしまう「巻き爪」になることがあります。特に、あまり活発に動かない高齢の猫や、上手く爪とぎができない猫に多く見られます。
巻き爪は肉球に刺さって炎症を起こしたり、痛みで歩くのを嫌がるようになったりするでしょう。最悪の場合、歩行困難になることもあるため、日頃から爪の状態をチェックしてあげることが大切です。
猫の爪で飼い主がケガをする
猫の爪が伸びすぎると、とがった爪で飼い主をうっかり引っ掻いてしまうことがあります。遊んでいる時や抱っこしている時、あるいは猫が驚いた時などに、意図せず爪を立ててしまい、飼い主が傷ついてしまうリスクが高まります。
猫の爪にはさまざまな細菌が付着しているため、引っ掻き傷から感染症を引き起こす可能性もゼロではありません。お互いが安全に過ごすためにも、正しく爪をケアして先端を丸く保つようにしましょう。
家具や壁紙が損傷する
爪とぎは猫の習性ですが、爪が伸びているとその鋭い爪で家具や壁紙、カーテンなどをより深く、広範囲にわたって傷つけてしまうことがあります。爪とぎ器を設置していても、伸びた爪でつい別の場所をガリガリとやってしまうこともあるでしょう。
定期的に爪を切ることで、爪の鋭さを和らげ、家の中の物を守ることにもつながります。
猫の爪切りの適切な頻度

猫の爪切りの適切な頻度は、猫の年齢によって異なります。以下を目安にして、こまめに爪の状態を確認して適度に爪切りをしてあげましょう。
- 子猫(~1歳):1~2週間に1回
- 成猫(1~7歳):3週間~1ヶ月に1回
- 高齢猫(7歳~):2週間に1回
子猫は爪が伸びるスピードが早く、爪を上手にしまうことも難しいため、色んなものに引っかかりやすいです。また、子猫のうちから爪切りに慣れさせておくことで将来のケアが楽になります。
成猫になるころには爪をしまうことも上手にできるようになり、爪とぎも覚えるため子猫の時よりは頻度を減らしても問題ありません。ただし、あまり爪とぎをしない猫や、活発に動き回らない猫は、より頻繁なケアが必要になる場合があります。
高齢の猫は運動量が減り、爪とぎをする回数も減少することで爪が太くなりやすいです。巻き爪のリスクも高まり、肉球に刺さりやすくなってしまうため、2週間に1回程度の頻度で爪の状態を確認し、ケアしましょう。
猫の爪切りに必要な道具

猫の爪切りを行う際は、以下の道具を準備しておくとスムーズに進められるでしょう。
- 猫用爪切り
- ガーゼ・コットン類
- タオル類
- 好きなおやつやおもちゃ
猫用爪切り
猫の爪切りには、人間用のものではなく、必ず猫専用の爪切りを使用しましょう。猫用爪切りは、ギロチンタイプとハサミタイプの2種類が主流です。
ギロチンタイプは、爪を穴に通して切るため、慣れれば素早くきれいに切ることができます。ハサミタイプは初心者でも扱いやすく、爪の先端を少しずつ切りたい場合にも便利です。
愛猫の爪のサイズや飼い主の使いやすさに合わせて、最適なものを選びましょう。
ガーゼ・コットン類
万が一、爪を深く切りすぎて出血してしまった場合に備え、ガーゼやコットン、そして止血剤をすぐに使える場所に用意しておきましょう。猫の爪の中には神経と血管が通っており、ここを傷つけると出血します。
出血した場合は、清潔なガーゼやコットンで出血部位を軽く押さえ、止血剤で処置します。これにより、猫の痛みや恐怖心を和らげ、爪切りに対するトラウマを軽減することが可能です。
タオル類
爪切りに慣れていない猫の場合、暴れたり逃げようとしたりすることがあります。そのような時に役立つのがタオルです。
タオルで猫の体を優しく包み込むことで、猫が安心感を覚え、落ち着いて爪切りをさせてくれることがあります。また、猫の顔や体を覆うことで、飼い主さんが引っ掻かれるのを防ぐ効果もあります。
猫の性格に合わせて、バスタオルやブランケットなど、心地良い素材のものを選びましょう。
好きなおやつやおもちゃ
爪切りは、猫にとってストレスを感じやすい時間です。そのため、爪切り後には、ご褒美として猫の好きなおやつやおもちゃを用意しておきましょう。
これにより、爪切りを「嫌なこと」ではなく「良いこと」と関連付けることができ、次の爪切りがスムーズになります。爪切り前にも、おやつや遊びでリラックスさせてから始めるのも効果的です。
ポジティブな経験を積み重ねて、爪切りを楽しい時間に変えていきましょう。
猫の爪切りの手順
猫の爪切りを行う際は、以下の手順に沿って進めるとスムーズです。
- リラックスできる環境を整える
- 爪の根元を確認して爪を押し出す
- 先端を少しずつ切る
- ご褒美をあげる
1.リラックスできる環境を整える
爪切りを始める前に、猫が安心できる環境を整えることが最も重要です。静かで落ち着いた部屋を選び、猫を優しく抱っこしたり、撫でたりしてリラックスさせましょう。
猫が眠っている時や、まどろんでいる時間帯に行うのも効果的です。爪切りは猫にとってストレスになりやすいため、無理に押さえつけたりせず、猫のペースに合わせて行うことが成功の鍵となります。
2.爪の根元を確認して爪を押し出す
猫の肉球あたりを軽く押すと、爪が押し出されてきます。この時、爪の根元にあるピンク色の部分「クイック」を確認しましょう。クイックには血管と神経が通っているため、ここを切ると出血してしまい、猫に痛みを与えてしまいます。
切るべき部分は、このクイックより先の、透明で白い部分です。猫によってはクイックが見えにくい場合があるので、ライトを当てて確認するのも有効です。
3.先端を少しずつ切る
爪の先端部分から、少しずつ慎重に切っていきます。一度に深く切ろうとせず、数回に分けて少しずつ切るのがコツです。
ギロチンタイプやハサミタイプの爪切りを使って、クイックに触れないように注意しながら、爪の白い部分だけをカットします。もし、誤ってクイックを切って出血してしまった場合は、あらかじめ用意しておいたコットンやガーゼで止血しましょう。
4.ご褒美をあげる
爪切りが終わったら、すぐに猫を褒めてあげましょう。優しく声をかけたり、撫でてあげたりすることで、猫は爪切りが「良いこと」だと認識しやすくなります。
そして、大好きなおやつやおもちゃをプレゼントして、ご褒美をあげましょう。この一連の流れを繰り返すことで、猫は爪切りを嫌がらなくなり、徐々にスムーズにできるようになります。
猫が爪切りを嫌がる場合の対処法

猫が爪切りを嫌がる場合でも、いくつかの工夫で落ち着いてケアできるようになります。焦らず、猫のペースに合わせて試してみましょう。
タオルで包んでリラックスさせる
猫が暴れてしまう場合は、タオルで体を優しく包んであげましょう。顔だけ、あるいは爪切りをする足だけを出すようにタオルで包むことで、猫は安心感を覚え、落ち着いてくれます。また、飼い主が引っかかれるのを防ぐ効果もあります。
複数回に分けて行う
一度にすべての爪を切ろうとせず、1日に1本ずつなど、数回に分けて少しずつ切る方法も有効です。猫が落ち着いているときにサッと1本だけ切り、終わったらすぐに褒めておやつをあげましょう。これを繰り返すことで、猫は爪切りに対して少しずつ慣れていきます。
無理強いはしない
猫が激しく嫌がったり、暴れたりしている場合は、無理に続けず、その日の爪切りは中止しましょう。無理やり行うと、猫は爪切りが「怖いもの」と認識してしまい、今後さらに嫌がるようになります。猫との信頼関係を壊さないことが最も大切です。
動物病院やサロンで切ってもらう
どうしても自宅での爪切りが難しい場合は、動物病院やトリミングサロンに相談してみましょう。プロは猫を落ち着かせることに慣れており、安全に素早く爪切りをしてくれます。無理をして猫にトラウマを植え付けるよりも、プロの力を借りることも選択肢の一つです。
茶屋ヶ坂動物病院|総合診療科のご案内猫の爪切りに関するよくある質問
猫の爪切りに関するよくある質問と回答を、以下にまとめます。
Q.爪とぎ器だけで済ませてもいいですか?
爪とぎ器だけでは、爪の先端を丸くする効果はありますが、根本まで伸びた爪を整えることはできません。特に、巻き爪や爪が割れるのを防ぐためには、定期的な爪切りが必要です。爪とぎをしながら、定期的に爪切りも行うことで、猫の爪の健康を保つことができます。
Q.爪切りの頻度は、室内飼いと外飼いで変わりますか?
外飼いの猫は、木に登ったり、地面を歩いたりすることで自然に爪が削れるため、室内飼いの猫に比べて爪切りは頻繁でなくても良い場合があります。しかし、年齢や活動量によっては伸びることもありますので、定期的なチェックは必要です。
一方、室内飼いの猫は爪が削れる機会が少ないため、より頻繁なケアが大切になります。
Q.誤ってクイックを切ってしまったらどうすればいいですか?
誤ってクイックを切ってしまった場合は、出血した部分を清潔なガーゼやコットンで軽く押さえて止血しましょう。ペット用の止血剤があれば、少量をつけることで素早く止血できます。
出血はすぐに止まることがほとんどですが、出血が止まらなかったり、猫が痛がったりする場合は、動物病院に相談してください。
猫の爪切りは健康と安全のための大切なケア
愛する猫ちゃんの健康と安全を守るために、爪切りは欠かせないケアです。爪切りをせずに放置すると、爪が割れたり、肉球に刺さる巻き爪になったりするだけでなく、飼い主さんがケガをしたり、家具が傷ついたりする原因にもなりかねません。
子猫は1〜2週間、成猫は3週間〜1ヶ月に1回、高齢猫は2週間に1回を目安に、こまめにチェックしてケアしてあげましょう。爪切りが苦手な猫でも、無理強いせず、おやつやタオルを上手に使いながら、少しずつ慣れさせていくことが大切です。
もしどうしても難しい場合は、動物病院やトリミングサロンのプロに任せることも視野に入れましょう。正しい知識と道具を使い、猫も飼い主も快適に過ごせるように適切なケアをしてください。