猫はさまざまな声を使い分けて、感情や状況を表現しています。「ニャー」や「ゴロゴロ」など親しみのある鳴き声だけでなく、「シャー」「ウー」といった威嚇のような鳴き声もあり、そのバリエーションは実に多彩です。

どんなときにどんな声を出すのかを知っておくことで、猫の気持ちをより深く理解できるようになります。

本記事では、鳴き声の基本的な種類や特徴、猫が鳴く理由などを詳しく解説します。

猫の鳴き声の基本的な種類と特徴

猫は言葉を話せないかわりに、鳴き声で気持ちを伝えてくれます。鳴き声の違いを理解することは、猫が今どんな気持ちなのか、何を伝えたいのかを読み取るうえで大切です。

ここでは、猫の代表的な鳴き声の種類と特徴についてご紹介します。

  • ニャー
  • ニャッ
  • ゴロゴロ
  • シャー
  • ウー
  • ギャッ
  • クルル、カカカ

ニャー

ニャーという鳴き声は、猫が飼い主に気持ちを伝える際にもっともよく使う声です。「ごはんちょうだい」や「かまって」など、甘えやお願いの気持ちを表しています。

声のトーンが高く穏やかなときは、機嫌が良いサイン。特に、リラックスしているときは、やわらかくゆっくり鳴くのが特徴です。

ニャッ

ニャッという短く小さな鳴き声は、猫が親しい相手に向けて発する挨拶のサインです。名前を呼ばれたときや、優しくなでられたときなどに、反射的に鳴くことがあります。「こんにちは」や「ありがとう」といった気持ちを伝えているような、好意的な鳴き声といえるでしょう。

リラックスした様子で「ニャッ」と鳴いたときは、信頼関係が築けている証。こちらも穏やかに声をかけ返すと、猫との距離がより近づきます。

ゴロゴロ

ゴロゴロという喉を鳴らす音は、猫がリラックスしているときや、気分が良いときに発するサインです。くつろいでいるときや、飼い主になでられて気持ちいいと感じているときによく聞かれます。

「幸せだよ」「安心してるよ」といった満足の気持ちが込められており、信頼関係の証ともいえる鳴き声です。

シャー

シャーッという鳴き声は、猫が怒りや恐怖を感じているときの威嚇のサインです。しつこくされたり、驚かされたりすると、背中の毛を逆立てながらこの声を上げて相手を追い払おうとします。

「ここから出ていけ」という強い意思表示でもあり、無理に近づくと攻撃に発展することも。また、飼い主や家族に対しても威嚇する場合は、猫が人より優位に立っていると感じている可能性もあります。

ウー

ウーという低く唸るような声は、猫が警戒心や不快感を抱いているときの威嚇のサインです。体を低く構え、耳を後ろに倒しながらこの声を出すときは、「これ以上近づくな」という強い意思表示といえます。

また、体調不良や痛みがあるときにも見られるため、触れたときに唸る場合は病気やケガの可能性もあります。必要に応じて、早めに動物病院を受診することが大切です。

ギャッ

ギャッという鋭く短い鳴き声は、猫が強い痛みや強烈な不快感を感じたときに発するサインです。たとえば尻尾を踏まれたときや、ケガしている部位に触れられたときなどに見られます。

普段聞かないような悲鳴を上げたときは、何らかの異変が起きている可能性が高いため、すぐに様子を確認しましょう。鳴き声が続いたり、元気がない様子が見られたりする場合は、早めに動物病院で診てもらうことをおすすめします。

クルル、カカカ

クルルやカカカといった特徴的な鳴き声は、「クラッキング」または「チャタリング」と呼ばれ、猫が興奮しているときに見られます。窓の外の鳥や虫など、獲物を見つけたときに狩猟本能が刺激され、「捕まえたいのに届かない」というもどかしさからこの音を出します。

歯をカチカチ鳴らすような音が特徴で、猫特有の反応です。獲物への強い関心やフラストレーションが、この不思議な鳴き声に表れているのです。

猫が鳴く理由とは?

猫が鳴く理由にはさまざまな背景があります。ただ単に「声を出している」ように見えても、実は気持ちや体の状態を伝える大切なサインかもしれません。

ここでは、猫が鳴く主な理由について詳しく見ていきましょう。

  • 飼い主とのコミュニケーション
  • 本能や習性
  • ストレスや体調不良のサイン

飼い主とのコミュニケーション

家庭で暮らす猫は、飼い主とのコミュニケーションの一環として鳴き声を使います。「お腹がすいた」「かまってほしい」など、自分の気持ちや要求を伝えるために鳴くのです。また、体調が悪いときや不安を感じたときにも、助けを求めるように鳴くことがあります。

一方、野生の猫はめったに鳴かず、鳴き声よりも仕草やにおいで意思を伝えます。人と暮らすうちに、猫は鳴くことで人と通じ合う術を身につけていったのです。

本能や習性

本能や習性も、猫が鳴く理由のひとつです。たとえば、発情期には異性を引き寄せるために大きな声で鳴いたり、縄張りを主張するために鳴いたりすることがあるなど、本能に基づいた行動が見られます。

また、獲物を見つけたときに見せる「クラッキング」も、本来の狩猟本能による反応です。こうした行動は飼い猫にも残っており、何気ない瞬間に鳴き声や仕草として表れることがあります。

ストレスや体調不良のサイン

猫の鳴き声には、ストレスや体の不調が関係していることもあります。環境の変化や騒音、飼い主との距離感に不安を感じると、その不快な気持ちを声にして伝えようとして鳴いているのです。

また、痛みや違和感がある場合には、いつもと異なる鳴き方になることもあります。とくに急に声の調子が変わったり落ち着きがなくなるような場合は、健康トラブルの恐れがあるため注意が必要です。

異常な鳴き声が続くときの対処法

 猫がいつもと違う声で鳴き続けているときは、何らかの異変を知らせている可能性があります。

ここでは、異常な鳴き声が続くときの対処法についてご紹介します。

  • 環境や生活リズムを見直す
  • 獣医師の診察を受ける
  • 発情期や老化による変化を考慮する

環境や生活リズムを見直す

猫がいつもより頻繁に鳴き続ける場合、まずは身の回りの環境や日々の暮らしに変化がなかったかを振り返ってみましょう。引っ越しや模様替え、来客などがきっかけで、不安やストレスを感じている可能性があります。

また、飼い主とのふれあいの時間が減ったり、食事のタイミングが不規則になったりすることも、猫が落ち着きをなくす原因のひとつです。普段と異なる様子が見られるときは、意識的に安心できる空間を整えてあげるようにしましょう。

獣医師の診察を受ける

異常な鳴き方が続く背景には、体の不調が隠れていることもあります。特に、苦しそうな声を出したり、触れられるのを嫌がる場合は、痛みや病気のサインかもしれません。

見た目だけでは判断できないケースも多いため、様子がおかしいと感じたら、早めに動物病院を受診することが大切です。

茶屋ヶ坂動物病院|総合診療科のご案内

発情期や老化による変化を考慮する

猫の鳴き声の変化には、発情期や老化が影響していることもあります。発情中の猫は大きな声で長時間鳴くことがあり、特に未避妊・未去勢の猫に多く見られます。

また、高齢になると認知機能の低下により、昼夜逆転や理由のない夜鳴きが起こることも。

こうした生理的な変化が背景にある場合は、無暗に叱るのではなく、猫が落ち着ける環境作りや適切なケアでサポートすることが大切です。

鳴き声の種類を知って猫の気持ちを理解しよう

猫は、声のトーンや鳴くタイミングによって、さまざまな気持ちや状態を伝えようとしています。「甘えたい」「お腹がすいた」といった日常的な欲求から、「怖い」「触らないで」といった警戒や不調のサインまで、鳴き声にはたくさんの意味が込められています。

鳴き声は、猫と飼い主をつなぐ大切なコミュニケーション手段です。猫の声に耳を傾けることで、気持ちや体調の変化にもいち早く気づくことができます。普段の様子や声の変化に目を向けることは、猫との信頼関係を深めるうえでの大切な一歩といえるでしょう。