近年、日本では保護猫の譲渡が活発化し、殺処分数も過去最少の水準にまで減少しています。しかし、依然として不幸な経過を辿る猫は少なくありません。保護猫を家族の一員として迎えることは、こうした命を救う一助となります。
今回のコラムでは、保護猫を迎える際の選択肢や譲渡の流れ、トライアル期間の過ごし方、必要な準備などについて詳しく解説します。
保護猫とは?

保護猫とは、飼い主の事情や劣悪な環境など、さまざまな理由で行き場を失って保護された猫のことを指します。飼育放棄、迷子、多頭飼育やブリーダーの崩壊、野良猫など、保護に至る経緯は猫によって異なりますが、いずれも「保護」という形で命をつなぎ、新たな飼い主との出会いを待っている存在です。
こうした猫たちは、保健所や動物愛護センター、保護団体、個人のボランティアによって一時的に保護され、譲渡会や里親募集サイトなどを通じて、新しい家庭に迎えられる日を待っています。
保護猫を迎える際の基本的な選択肢
保護猫を迎える際には、いくつかの選択肢があります。それぞれに特徴や注意点があるため、自分に合った方法を見つけることが大切です。
以下に、基本的な4つの選択肢をご紹介します。
動物保護団体
保護猫を迎える選択肢の一つが、動物保護団体です。全国にはさまざまな動物保護団体があり、譲渡会を開催したり、里親募集サイトで情報を発信したりしています。猫の性格や体調を丁寧に説明してくれる団体も多く、自分に合った猫を見つけやすいのが特徴です。
動物愛護センター
動物愛護センターとは、いわゆる「保健所」にあたる公的機関のことです。動物愛護センターでは定期的に譲渡会を開催しており、申請には飼い方教室の受講や飼育条件の確認が必要となります。
費用は基本無料で、ワクチンの接種や寄生虫の駆除、避妊去勢手術が済んでいる猫も多く、譲渡後のサポートも受けられます。
個人間での譲渡
諸事情により猫を飼えなくなった飼い主から、SNSや地域の掲示板などを通じて、個人的に譲渡されるケースもあります。こうした個人間の譲渡は、猫の性格を詳しく聞けたり、譲渡後も相談しやすい点が魅力です。
一方、健康状態の確認や譲渡の条件がはっきりしないケースもあり、トラブル防止のためには慎重な対応が求められます。
自分で保護
ふとしたきっかけで、野良猫や子猫を保護することになる場合もあります。そんなときは、まず迷い猫でないかを確認したうえで、動物病院で健康チェックを行いましょう。
自宅に迎え入れるのであれば、猫が安心できる環境を整え、少しずつ慣れさせる配慮が必要です。飼育に不安がある場合は保護団体や専門家にアドバイスを仰ぐのも一つの方法といえます。
譲渡会や里親募集サイトでの出会い方

保護猫と出会う方法としておすすめなのが、譲渡会や里親募集サイトの活用です。直接猫と触れ合える譲渡会と、自宅でじっくり比較できる里親募集サイト。それぞれの違いや特徴を詳しく見ていきましょう。
譲渡会での出会い方
譲渡会は、保護猫と直接触れ合える貴重な機会です。地域の保護団体や施設のSNS・サイトなどで情報を確認し、事前予約が必要な場合は手続きを行うなどして、積極的に参加しましょう。
会場では猫の性格や相性を直接確かめられるほか、スタッフから詳しい説明を受けることもできます。申し込み後は審査やトライアル期間を経て、正式譲渡となります。
里親募集サイトでの出会い方
里親募集サイトでは、写真やプロフィールを見ながら保護猫の情報を検索できます。気になる猫がいれば、募集者に連絡を取り、譲渡の条件を確認。面会やトライアルを経て正式譲渡となるのが一般的な流れです。
譲渡会に比べて、多くの選択肢から自分に合う猫を比較・検討できる点がメリットといえるでしょう。
保護猫の譲渡を受ける際のマナー
保護猫を迎える際は、「命を引き受ける」という意識を持ち、誠実な態度で臨むことが大切です。面談や自宅訪問では、飼育環境や家族構成などの情報に偽りがないよう正確に伝えることが求められます。
また、場合によっては正式譲渡時に契約書への署名や譲渡金の支払いが発生することもあります。譲渡後も飼育状況の報告が義務付けられているケースがあり、連絡を怠らないこともマナーの一つです。
譲渡者への感謝と保護猫への愛情を忘れずに、責任ある対応を心がけましょう。
譲渡の流れとトライアル期間の過ごし方

保護猫を迎えるまでには、譲渡条件の確認からお見合い、トライアル期間を経て正式譲渡に至るまで、適切な流れを経る必要があります。
ここでは、基本的な譲渡の流れやトライアル期間の過ごし方について詳しく解説します。
基本的な譲渡の流れ
保護猫の譲渡にはいくつかのステップがあります。譲渡会や里親募集を通じて譲渡を受ける場合は、譲渡条件を確認したうえで、譲渡会やお見合いで実際に猫と対面。
多くの場合はトライアル期間が設けられており、相性や飼育環境を確認します。問題がなければ正式な譲渡を経て、猫を家族として迎え入れます。
個人間で譲渡を受ける場合も、基本的には同様の流れを経ることが望ましいでしょう。条件をしっかり確認するだけでなく、飼い主や猫と信頼関係を築けるように、丁寧なやり取りを心がけましょう。
トライアル期間の過ごし方
トライアル期間は猫が新しい環境に慣れることを第一に考え、静かに見守ることが大切です。最初はケージで過ごさせて、慣れてきたら少しずつ行動範囲を広げましょう。また、先住猫がいる場合は、慎重に段階を踏みながら対面を進めます。
猫の様子は保護団体や元の飼い主にこまめに報告し、必要に応じて相談しながらトライアルを進めていくと安心です。猫と飼い主が新しい生活に慣れるための大切な期間として、無理のないペースで関係を築いていきましょう。
保護猫を迎える前に準備しておくべきこと

保護猫をスムーズに迎えるためには、猫が安心して暮らせる環境を整えることがポイントです。以下の3つのポイントを参考に、保護猫を迎え入れる準備を進めましょう。
飼育に必要なアイテムをそろえる
保護猫を迎える前には、ケージ、トイレ用品、フード、キャリーバッグ、爪とぎなど、飼育に必要なアイテムをそろえておくことが大切です。また、脱走防止フェンスやおもちゃなども、猫の安全やストレス軽減に役立ちます。
猫を迎えるための環境づくりをする
猫が安全かつ快適に過ごせる環境づくりをすることも、重要な準備の一つです。誤飲の危険がある小物や有害な植物、薬品類などは猫が届かない場所に移動しましょう。
また、爪とぎやキャットタワーを設置する、タイルカーペットを敷くなど、壁や床を傷つけない工夫を取り入れると、猫も人も安心して暮らせる空間になります。
家族の理解や協力を得る
保護猫を迎える前には、家族全員で話し合い、理解と協力を得るようにしましょう。猫の性格や世話にかかる手間、生活の変化などを共有し、家族みんなで責任を分かち合うことが大切です。
また、アレルギーの有無や将来的な飼育の見通しも確認しておく必要があります。特に高齢の方が飼い主となる場合は、万が一の場合の対応について、家族や親族の理解を得ておくことが重要といえます。
保護猫の迎え方について正しい知識を身につけよう
保護猫を迎える方法には、いくつかの選択肢があります。スムーズに正式譲渡へと進めるためには、譲渡の流れや方法を理解し、事前に必要な準備を整えておくことが大切です。
猫が安心して暮らせる環境をしっかり整えたうえで、保護猫を新しい家族として迎え入れましょう。