猫の体調不良を招く大きな要因の1つに、寄生虫への感染があります。寄生虫が体内に侵入すると、下痢や嘔吐といった消化器症状だけでなく、鼻の違和感など呼吸器に関連する意外な症状が引き起こされることもあります。

本記事では、猫に感染しやすい寄生虫の具体的な種類や日常でよく見られるサインについて、飼い主さんが知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。

猫に寄生する主な寄生虫の種類

猫に寄生する寄生虫は、体内に潜む「内部寄生虫」と、体表や耳などに付着する「外部寄生虫」に大別されます。寄生する部位によって症状や感染経路が異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。

  • 内部寄生虫
  • 外部寄生虫

内部寄生虫

内部寄生虫とは、猫の体内、特に消化管に寄生し、栄養を奪ったり臓器に負担をかけたりする寄生虫のことです。代表的なものとして、下記の4種類が挙げられます。

  • 回虫
  • 鉤虫
  • 条虫
  • 原虫

回虫

回虫は猫に多く見られる内部寄生虫の一種で、なかでも代表的なのが「猫回虫」です。虫卵を口から取り込むことで感染し、小腸に寄生します。屋外で生活する猫や子猫に多く見られ、ネズミなどを捕食することでも感染が成立します。

鉤虫

鉤虫も、猫に寄生する代表的な内部寄生虫です。小腸に寄生し、虫卵や幼虫を口から取り込むほか、幼虫が皮膚から侵入することで感染します。腸粘膜に強く吸着して吸血するため、子猫が感染すると重度の貧血を引き起こす恐れがあります。

条虫

条虫は平たい紐状の体を持つ内部寄生虫で、小腸に寄生し、体表から栄養を吸収して成長します。猫に感染する主な条虫としては、以下が挙げられます。

  • 瓜実条虫
  • マンソン裂頭条虫
  • 猫条虫

猫は条虫そのものを食べて感染するのではなく、ノミやネズミ、両生類など、条虫の幼虫を体内に宿した「中間宿主」を、猫が口にしてしまうことで感染が成立します。

原虫

原虫は単細胞のごく小さな寄生生物です。代表的なものとしては以下が挙げられます。

  • コクシジウム(イソスポラ)
  • トキソプラズマ
  • ジアルジア

汚染された糞便や水、食器などを介して経口感染することが多く、多頭飼育の環境や子猫では特に感染が広がりやすい傾向が見られます。

外部寄生虫

外部寄生虫とは、猫の体表や耳などに寄生し、皮膚トラブルや強いかゆみを引き起こす寄生虫のことです。ここでは、猫に多く見られる外部寄生虫を紹介します。 

  • ノミ
  • マダニ
  • 耳ダニ

ノミ

外部寄生虫の代表格であるノミは、猫の体表に寄生して吸血を行う厄介な存在です。日本で猫に被害を及ぼすのは、そのほとんどが「ネコノミ」という種類です。

体長はわずか2mmほどと非常に小さいですが、驚異的な繁殖力を持っており、気温が保たれる室内では冬場でも活動・増殖を繰り返します。

屋外での他個体との接触だけでなく、飼い主さんが靴や服に付けて持ち込んでしまったノミが室内で繁殖し、愛猫に飛び移って感染に至るケースも少なくありません。

マダニ

マダニは草むらや公園などの自然環境に広く生息しており、屋外へ散歩に出る猫や、庭先で遊ぶ習慣のある猫に寄生するリスクが高いです。皮膚の薄い頭部や耳の周囲に付着し、口器を深く差し込んで吸血するため、無理に取り除くと皮膚を傷つける恐れがあります。

耳ダニ

耳ダニは、正式にはミミヒゼンダニと呼ばれる外部寄生虫です。外耳道の表面に寄生し、耳の角質や分泌物をエサにして急激に増殖します

非常に微小なため肉眼で姿を捉えることは困難ですが、その活動によって耳の中に猛烈なかゆみが生じます。愛猫がしきりに耳を後ろ足で掻いたり、激しく頭を振ったりする仕草を見せるときは、この耳ダニが潜んでいる可能性が高いといえます。

猫が寄生虫に感染するとどんな症状が現れる?

猫が寄生虫に感染すると、さまざまな不調が現れます。早い段階で異変に気づくためにも、代表的な症状を把握しておきましょう。

  • 消化器系の症状
  • 皮膚や被毛の異常
  • 行動の変化

消化器系の症状

猫が内部寄生虫に感染すると、下痢や嘔吐といった分かりやすい症状のほかに、腹痛、食欲不振、体重減少、さらには栄養不足による毛艶の悪化など、全身に影響が及びます

特に注意が必要なのは、免疫力が低い子猫や、体内の寄生虫の数が多いケースです。血便や黒色便、腹部の膨満といった重い症状に進行することもあります。

皮膚や被毛の異常

寄生虫による健康被害は、皮膚や被毛にも現れることがあります。ノミやマダニなどの外部寄生虫に寄生されると、唾液によるアレルギー反応や吸血時の刺激によって、皮膚の強いかゆみや赤み、発疹、フケの増加、脱毛といった症状が引き起こされます。

猫が首周り、背中、あるいは尾の付け根などを執拗に掻きむしったり、毛を噛みちぎるような仕草を見せたりする場合は、外部寄生虫が潜んでいる可能性が極めて高いといえます。

行動の変化

寄生虫がもたらす不快感や痛みは、猫の日常の行動にも明確な変化として現れます。具体的には、不快感や痛みからお尻を床にこすりつける、体や尾の付け根を過剰に舐めるといった仕草が目立つようになります。

また、活動量が低下して元気がなくなったり、物陰に隠れてじっと過ごす時間が増えたりするケースも見られます。 

猫の寄生虫の治療方法とは?

猫の寄生虫を治療するには、寄生虫の種類や猫の体調に合わせた対策を行うことが重要です。ここでは、代表的な治療方法や、市販薬と処方薬の違いについて解説します。

  • 駆虫薬の投与
  • 市販薬と動物病院の薬の違い

駆虫薬の投与

猫の寄生虫治療では、動物病院で処方される駆虫薬の投与が基本となります。寄生虫の種類に応じて錠剤や首元に垂らして使う外用薬(スポットオン剤)、注射薬などを使い分けることが一般的です。

多くの場合は1回の投与で効果が期待できますが、状況によっては複数回の投薬が必要になることもあります。また、投薬後は再検査を行い、必要に応じて薬の再投与や生活環境の見直しを行うことが大切です。

市販薬と動物病院の薬の違い

市販の駆虫薬と動物病院で処方される医療用医薬品では、効果や安全性に大きな差があります。

病院で処方される薬は、猫の体重や健康状態に合わせて選ばれ、さまざまな寄生虫に対して高い効果が期待できます。一方、市販薬は効果や持続性にばらつきがあるため、自己判断で使用する際には注意が必要です。

寄生虫を確実に駆除したい場合は、獣医師の診察を受け、動物病院で処方される薬を使用することが推奨されます。

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猫の寄生虫を予防するためにできること

猫の寄生虫は、生活環境や飼育方法によって感染リスクが左右されます。本章では、猫の寄生虫を予防するためにできることを紹介します。

  • 清潔な環境の維持
  • 外飼い猫のリスク管理
  • 「通年予防」の重要性

清潔な環境の維持

猫の寄生虫感染を未然に防ぐためには、生活環境における衛生管理を徹底することが不可欠です。特に感染源となりやすいトイレの管理は最優先事項。排泄物を速やかに処理し、常に清潔な状態を維持することで虫卵が拡散するリスクを最小限に抑えられます。

さらに、猫が頻繁に使用する寝具やおもちゃは定期的に日光消毒を行い、カーペットやソファの隙間などは念入りに掃除機をかけましょう。ノミやダニが繁殖しにくい状況を整えることができます。

外飼い猫のリスク管理

外飼いの猫は、ノミ、マダニ、さらには各種内部寄生虫に触れる機会が非常に多く、どうしても感染リスクが高まってしまいます。寄生虫との接触を完全に避けることは難しいため、定期的な予防薬の接種が重要です。

また、日頃から愛猫の体表や耳の状態をチェックし、異変があれば早めに動物病院を受診することで、重症化を防ぐことができます。

「通年予防」の重要性

寄生虫対策において重要となるのが、一年を通した「通年予防」です。ノミは冬場でも暖房の効いた室内であれば活発に繁殖を続けますし、マダニも温暖化の影響で生息域が北上しており、季節を問わず警戒が必要です。

特にマダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、猫だけでなく人間にも感染する人獣共通感染症であり、発症時の致死率が非常に高い病気です。

大切な愛猫はもちろん、飼い主さん自身やご家族の安全を守るためにも、季節で区切ることなく1年を通して予防を継続することをおすすめします。

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猫の寄生虫の種類と症状を理解しよう

猫の寄生虫は、体内に寄生する内部寄生虫と体表に寄生する外部寄生虫に大別でき、種類によって症状や感染経路が異なります。大切なのは、それぞれの特徴を正しく理解し、早い段階で異変に気づくことです。

寄生虫の感染が疑われる場合は自己判断せず、動物病院で検査と治療を受けるようにしましょう。正しい対処と適切な予防を行うことが、愛猫の健康を守ることにつながります。