猫が吐いてしまう原因の1つとして挙げられるのが、毛球症です。毛づくろいで飲み込んだ毛が胃や腸で「毛球」になることで、嘔吐や便秘、食欲低下などさまざまな不調を引き起こします。

悪化すると命に関わるケースもある問題ですが、早めにサインに気づいて適切なケアを行えば、重症化を防ぐことが可能です。

本記事では、猫の毛球症の原因や症状、治療法や予防策を詳しく解説します。 

猫の「毛球症」とは?

猫の毛球症とは、毛づくろいの際に飲み込んだ毛が消化されずに胃や腸にたまり、塊となって残ってしまう状態のことです。

通常、飲み込んだ毛は便とともに排出されますが、量が多かったり絡まりやすい場合は毛同士が集まって大きな塊となり、胃から腸に進めなくなることがあります。こうしてできた毛球が胃に停滞すると、吐き戻しや食欲不振、便秘などの不調につながると考えられています。

毛球症の原因

猫の毛球症は、飲み込む毛の量や体の状態によって起こりやすくなります。

毛が長い品種の猫や毛が生え変わる換毛期の猫は、毛づくろいの際に口に入る毛が多くなるため、毛球ができやすい傾向があります。また、ストレスや環境の変化によって毛づくろいの回数が増えると、体内にたまる毛の量も増えてしまいます。

さらに、皮膚のかゆみを伴うアレルギーや炎症、加齢などによる消化管の動きの低下も、毛の排出を妨げる要因です。これらが重なることで、毛球症の発症リスクが高まります。

猫の毛球症の症状

毛球症になると、体内に溜まった毛球が消化管に負担をかけることで、さまざまな不調が現れます。

  • 嘔吐
  • 便秘
  • 食欲不振

嘔吐

毛球症で最もよく見られる症状は、嘔吐です。胃の中に毛球が溜まると、猫は異物を外へ出そうとして吐き戻しを繰り返すようになります。毛の塊そのものを吐き出す場合もあれば、毛球がうまく出せずに液体だけを吐くこともあります。

嘔吐が続くと胃酸が食道を刺激して逆流性食道炎のような症状が引き起こされ、さらなる症状の悪化につながる恐れもあるため注意が必要です。

便秘

毛球が腸まで到達して引っかかると、便の通りが悪くなり便秘を引き起こすことがあります。猫の腸は細く長い構造のため毛球が詰まりやすく、排便しづらい、便が細くなるといった症状が現れるのです。

症状が悪化すると腸が詰まる腸閉塞に進行する恐れがあり、場合によっては命に関わる危険性もあります。排便の様子に変化が見られる場合は、早めに動物病院へ相談することが大切です。 

食欲不振

毛球が胃や腸に溜まると圧迫感や不快感が生じ、食欲が落ちることがあります。症状が続くと体重の減少などにつながる恐れもあるため、早めの対処が必要です。猫が餌を食べたがらないときは、毛球症の可能性も考慮して、獣医師の診察を受けることをおすすめします。

茶屋ヶ坂動物病院|消化器科のご案内

猫の毛球症の検査方法

猫の毛球症が疑われる場合、原因や状態を正確に把握するために、いくつかの検査を組み合わせて行うことが一般的です。ここでは、猫の毛球症の主な検査方法を紹介します。

  • 視診・触診
  • レントゲン検査
  • 超音波検査
  • 内視鏡検査

視診・触診

毛球症の疑いがある場合、まずは獣医師による視診・触診が行われます。被毛のツヤや脱毛の有無、皮膚炎の兆候などを観察し、過度な毛づくろいの形跡がないかをチェックします。

さらに、お腹の張りやしこり、触れられた際の痛みがないかを確かめ、毛球が胃腸に影響を与えていないかを判断します。嘔吐の回数や食欲、便の状況などの問診も、重要な評価ポイントとなります。

レントゲン検査

レントゲン検査では、腸が詰まっていないか、異常なガスの溜まり方がないかなど、腸閉塞の兆候を確認します。

猫の状態によっては、造影剤を使った検査が行われることもあります。造影剤を使用すると消化管の動きがより明確になり、腸閉塞の有無を判断する際の重要な手がかりとなります。

超音波検査

胃や腸の内部をリアルタイムで観察できる超音波検査も、毛球症の診断に役立ちます。毛球の位置や大きさを把握できる場合もある他、腸の動きの低下や炎症の有無など、消化管の状態も詳しく観察することが可能です。

レントゲンでは見えにくい軟部組織の異常を捉えやすいため、毛球症とその他の消化器疾患を鑑別する際にも有効な方法とされています。

内視鏡検査

毛球をレントゲンや超音波で判別しにくいケースでは、内視鏡検査が有効です。細いカメラを胃や腸に挿入して内部を直接観察することで、毛球の有無や大きさ、位置をより正確に確認できます。

状況によっては毛球を取り除けることもあり、診断と治療の両面で役立つ検査方法です。 

毛球症の治療方法

猫の毛球症の治療方法は、症状や毛球の大きさなどによって異なります。

  • 内科的治療
  • 外科的治療

内科的治療

猫の毛球症の治療では、まずは投薬や食事療法といった内科的ケアが行われます。

症状が軽い場合は、毛球除去剤や毛の排出を助けるサプリメント、専用フードを使って便と一緒に毛が出やすい状態を整えます。便秘が見られるケースでは、腸の動きを助ける薬の処方や食事調整を行い、必要に応じて点滴や下剤で排出をサポートします。

嘔吐が続く際は、吐き気止めや胃を保護する薬を使うこともあります。皮膚のトラブルやストレスが過度な毛づくろいの原因となっている場合は、その改善も同時に進めることが大切です。

外科的治療

内科的治療で改善が見られない場合や、毛球が大きく自力で排出できない場合は、外科的な処置が必要です。毛球の位置やサイズに応じて、内視鏡での摘出もしくは開腹手術が選択されます。

いずれの方法も全身麻酔が必須であり、術後は回復のための入院が必要となります。猫への負担や治療費が大きくなる点も理解したうえで、適切な治療法を選択することが重要です。

毛球症を予防するには?

猫の毛球症を予防するには、日頃のケアと生活環境の見直しが大切です。毛が長い品種の猫や換毛期の猫は特に抜け毛が多く、体内に取り込んでしまう毛の量も増えやすいため、こまめなブラッシングを心掛けましょう。

毛の排出を助ける専用フードやサプリメントの活用、水分をしっかり摂れる環境づくりも効果的です。ストレスや皮膚トラブルによって毛づくろいの頻度が増えることもあるため、生活環境を整えつつ、スキンケアや定期的な健康チェックを行うことが求められます。

早期発見と日常のケアが大切

毛球症は、どんな猫にも起こりうる身近なトラブルです。毛づくろいで飲み込んだ毛が体内に溜まり、胃や腸で固まることで、嘔吐や便秘、食欲低下などさまざまな不調を引き起こす可能性があります。

放置すると症状が悪化する恐れもあるため、異変に気づいたら早めに動物病院を受診することが大切です。

毛球症の予防や改善には、こまめなブラッシングや専用フードの活用、水分補給の工夫など、日常のケアを続けることが役立ちます。普段から体調の変化に気を配ることが、愛猫を毛球症から守るうえでの大切なポイントです。