猫や犬などのペットにも、人間と同じように血液型が存在します。猫の血液型を知ることは、大切な愛猫の命を守るうえで非常に重要になるため、正しい知識を身に付けておきましょう。

今回は、猫の血液型の種類や特徴、血液型の調べ方や輸血時に知っておきたい注意点など、猫の血液型に関するさまざまな情報をわかりやすく解説します。猫を飼っている方や、今後飼う予定がある方は、この記事を最後まで読んで猫の血液型に関する知識を深めてください。

猫の血液型は3種類

猫の血液型は、「A型」「B型」「AB型」の3種類です。この3種類の中でも、特にA型の猫が多く、国や猫の種類によって異なりますが、A型が全体の80~90%ほどを占めると言われています。

続いてB型が全体の約10%と少なく、AB型はさらに少なくなっており、非常に稀な血液型です。このように、猫の血液型はA型が圧倒的に多く、B型やAB型は珍しいという特徴があります。

ちなみに、猫の血液型と人間の血液型は同じアルファベットを使用していますが、全く別のものです。

猫の血液型の決まり方

猫の血液型は、「A型>AB型>B型」という優劣関係になっており、A型の遺伝子が最も強いため、A型の猫が圧倒的に多くなっています。また、この優劣関係により、猫の血液型は以下の組み合わせで決まります。

子の血液型 親の血液型の組み合わせ
A型 ・A型とA型
・A型とB型
・A型とAB型
B型 ・B型とB型
AB型 ・AB型とB型
・AB型とAB型

上記のように、親のどちらかがA型だった場合、その子はA型になるので、B型やAB型の猫が少ないという状況です。B型の遺伝子は最も劣勢ですが、特定の純血種(ブリティッシュショートヘア、スコティッシュフォールド、コーニッシュレックスなど)では比較的高い割合で存在するため、猫全体で見るとAB型より多くなっています。

猫の血液型を把握しておくことの重要性

猫の血液型を把握しておくことは、猫の健康や安全を守るうえで欠かせません。具体的には、以下の理由があります。

  • 輸血時の不適合反応を防ぐため
  • 子猫の新生児溶血を予防するため

輸血時の不適合反応を防ぐため

猫の血液中には、もともと他の血液型に対する自然抗体が存在します。特に、B型の猫はA型に対する強い抗体(抗A抗体)を大量に持っています。

B型の猫にA型の血液を輸血すると、輸血された血液がすぐに破壊され、重篤なショック症状や腎不全を引き起こします。最悪の場合は死に至る可能性があり、非常に危険です。このような事態を防ぐためには、輸血する前に血液型を把握しておかなければなりません。

子猫の新生児溶血を予防するため

猫の血液型は、母猫と子猫の間でも問題を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

A型のオス猫とB型のメス猫が交配し、A型の子猫が生まれた場合、子猫は母猫の母乳から抗A抗体(B型の母猫が持つ抗体)を取り込んでしまいます。この抗体が子猫の体内に入ると、子猫のA型の赤血球を破壊してしまい、新生児溶血と呼ばれる病態を引き起こします。

新生児溶血を起こした子猫は、貧血や黄疸などの症状を発症し、最悪の場合は命を落とすことも。このような理由から、特に純血種の繁殖を考えている飼い主やブリーダーにとって、両親の血液型を知っておくことは非常に重要です。

猫の血液型と性格の関係性

人間の血液型と性格は関連性があるといわれることが多くありますが、猫の場合はどうでしょうか。結論から申し上げると、猫の血液型と性格は関連性がありません。

先述の通り、猫の血液型は90%以上がA型なので、血液型と性格に関連性があればほとんどの猫が似たような性格になるということになります。しかし、実際は同じ血液型でも性格はさまざまです。

猫の性格は、親猫の性格や育った環境、人間との関わり方などさまざまな要因で変わってきます。そのため、猫の性格を判断するうえで血液型は重要な判断材料にはならないことを理解しておきましょう。

猫の血液型を調べる方法

猫の血液型を調べる主な方法は、以下の通りです。

  • 血液判定キットによる検査
  • 外部検査機関へ依頼
  • DNA検査

血液判定キットによる検査

多くの動物病院では、猫専用の血液型判定キットを使用して血液型を検査します。少量の血液を採取して、専用キットで反応を確認することで血液型を判定する方法です。

検査結果は数分~15分程度でわかることが一般的で、緊急時の輸血準備などにも活用されます。

外部検査機関へ依頼

より詳細な検査が必要な場合や、判定キットがない場合は、動物病院が提携している外部の動物検査機関に血液サンプルを送って調べてもらうことも珍しくありません。この方法では、より正確な判定が可能ですが、結果が出るまでに数日から1週間程度かかることがあります。

DNA検査

近年では、DNA検査によって血液型を調べることも可能になっています。これは、口腔内の粘膜や血液からDNAを採取し、特定の遺伝子配列を解析することで血液型を判定する方法であり、遺伝子レベルで血液型が判明するため非常に正確です。

特に、繁殖を考えているブリーダーなどが利用することが多い方法です。

猫の輸血時の注意点

猫に輸血治療が必要になった際、飼い主としては以下の点を理解しておく必要があります。

  • 副反応が起きる可能性がある
  • 適合する血液がすぐに見つからない可能性がある
  • B型猫へA型猫の血液は輸血できない

副反応が起きる可能性がある

輸血する前には、必ず検査して正しい血液型を把握することに加え、クロスマッチテスト(交差適合試験)を実施します。クロスマッチテストは、輸血を受ける猫(レシピエント)の血液と、血液を提供する猫(ドナー)の血液を混ぜ合わせて、赤血球が凝集する反応が起きないかを確認する検査です。

このようにしてリスクを最小限に抑えたうえで輸血が行われますが、クロスマッチテストをクリアしても稀に副反応を起こしてしまうケースがあります。輸血前には副反応を予防するためにステロイドや抗ヒスタミン剤などを投与しますが、副反応のリスクを100%排除することはできないということを理解しておきましょう。

適合する血液がすぐに見つからない可能性がある

動物の輸血治療の現状として、人間のように血液バンクの仕組みがしっかりと整備されているわけではありません。

ドナーを募集して献血してもらい血液を確保しているという病院もありますが、そのほとんどは比較的規模の大きな病院に限られています。そのため、小規模の動物病院では対応が難しいことがほとんどです。

また、同じ血液型のドナーが見つかったとしても、クロスマッチテストで適合しなければ輸血を行うことはできません。

B型猫へA型猫の血液は輸血できない

基本的にはA型ならA型の血液を、B型ならB型の血液を輸血しますが、AB型は非常に稀でドナーが見つからない可能性も高いため、緊急時はA型の血液を代用するケースもあります。しかし、B型にはA型の血液を代用することはできません。

猫の血液には、人間と同様に異なる血液型に対する自然抗体が最初から存在します。特に、B型猫のA型に対する抗体(抗A抗体)は非常に強力です。

このため、B型の猫にA型の血液を輸血すると、輸血されたA型赤血球が即座に破壊されてしまい、急性溶血反応と呼ばれる重篤な拒絶反応が起こります。これは、発熱、嘔吐、ショック症状などを引き起こし、最悪の場合、命にかかわるため絶対に避けるべきです。

猫の血液型に関するよくある質問

猫の血液型についてよくある質問と回答を、以下にまとめます。

Q.自宅でも血液型を検査することはできますか?

基本的に血液型検査キットは動物病院で取り扱っており、一般向けに市販されていないため自宅では検査することができません。必ずかかりつけの動物病院に相談して、血液型検査を受けてください。

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Q.血液型検査にかかる費用はどれくらいですか?

血液型検査に使用するキットや動物病院によって異なりますが、一般的には5,000~10,000円程度が目安となっています。正確な金額が知りたい場合は、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

Q.猫の血液型はどのタイミングで調べればいいですか?

血液型検査はできるだけ早めに実施しておくことをおすすめします。具体的には、猫を飼い始めてすぐの時期を推奨しますが、繁殖を考えている場合や多頭飼育を考えている場合には、必ず事前に検査しておきましょう。

血液型を知って愛猫の命を守ろう

猫の血液型を把握することは、輸血時の不適合反応や子猫の新生児溶血を防ぐうえで非常に重要です。世の中の多くの猫はA型ですが、特定の猫種ではB型も多く存在するため、万が一の事態に備えて事前に動物病院で血液型検査を受けて、愛猫の血液型を把握しておきましょう。