健康的なイメージのある「ミネラルウォーター」ですが、犬に与える場合は慎重な対応が求められます。水に含まれるミネラル成分の種類や量によっては、体に負担をかけてしまうこともあるからです。
本記事では、犬に合ったミネラルウォーターの特徴や、与える際のポイント、避けた方がよい水の種類などを詳しく解説します。
犬にミネラルウォーターを与えても大丈夫?

愛犬に水を与える際に、「水道水で大丈夫だろうか」「ミネラルウォーターの方が安全ではないか」といった疑問を持つ方も少なくありません。結論から申し上げると、犬に与えても良いミネラルウォーターと、与えない方が良いミネラルウォーターがあります。
犬に与えるミネラルウォーターを選ぶときは、水の硬度に注目しましょう。ミネラルウォーターは、カルシウムとマグネシウムの含有量を表す「硬度」によって、さまざまな種類に分類されます。
硬度 | 区分 |
60mg/L以下 | 軟水 |
60~120mg/L | 中軟水 |
120~180mg/L | 硬水 |
180mg/L以上 | 超硬水 |
硬水は、カルシウムやマグネシウムなどの成分が多く含まれており、これが犬の体に負担をかけることがあります。特に体が小さい犬や持病のある犬に与えるのは避けたほうが安心です。一方、軟水はミネラルが控えめで、比較的安心して飲ませやすい種類といえます。
一般的に、日本国内で販売されている飲料水の多くは軟水に分類されており、犬にも適しています。
ミネラルウォーターを選ぶ際には、ラベルに記載された「硬度(mg/L)」が100以下のものを目安にするとよいでしょう。
日本の水道水は犬に与えても安全

日本の水道水は、厳しい衛生基準のもとで管理されており、犬に与えても基本的には問題ないとされています。厚生労働省によって定められた水質基準をクリアし、塩素による消毒もしっかり行われているため、細菌やウイルス感染の心配はほとんどありません。
また、日本の水道水は硬度が低く、軟水に分類されることが多いため、犬の体にもやさしいのが特徴です。持病がなく健康な犬であれば、水道水だけで十分な水分補給ができます。
ただし、水道水特有のにおいを嫌がる犬もいるため、その場合は浄水器を使ったり、いったん沸騰させてから冷ましたものを与えるのもおすすめです。また、古い配管が使われている住宅では、念のため水質の確認をしておくと安心でしょう。
犬に与える水の安全な選び方
ここでは、犬が安心して飲める水を選ぶためのチェックポイントを3つご紹介します。
- 水の硬度を確認する
- ペット用のものを選ぶ
- 浄水した水道水を与える
水の硬度を確認する
犬に与えるミネラルウォーターを選ぶときに、一番大切なチェックポイントは「硬度」の数値です。これは、水に含まれる無機成分、特にカルシウムとマグネシウムの濃度を示す指標で、数値が高いほど硬水、低いほど軟水とされています。
一般的に、硬度の情報はラベルやメーカー公式サイトに記載されており、商品を選ぶ際の参考になります。特に犬用として購入する場合は、体への負担を軽減するためにも、硬度100mg/L未満の水を基準にするとよいでしょう。
また、初めてミネラルウォーターを与える場合や、デリケートな体質の犬には、硬度40mg/L以下の超軟水から様子を見るのもおすすめの方法です。硬度は見た目では判断できないため、数値の確認を習慣にすることが大切といえます。
ペット用のものを選ぶ
愛犬の健康を守るためには、ペット用のミネラルウォーターを与えるのもひとつの方法です。ペット用のミネラルウォーターは犬の体に合わせてミネラル分が控えめに調整されており、成分表示も明確なため安心して使用できます。
また、保存料や香料を使用していないものも多く、毎日の水分補給にも取り入れやすいのが特徴です。中には、健康維持をサポートする成分が含まれているタイプもあります。
初めてミネラルウォーターを与えるときや、さまざまな理由で不安がある場合は、ペット専用のものから試してみるのも有効な選択肢でしょう。
浄水した水道水を与える
浄水器を使って水道水をろ過して与えるのも安全です。日本の水は基本的に安全ですが、塩素のにおいや微細な不純物が気になることもあります。こうした要素が原因で、犬が水道水を嫌がることもあるため、浄水によって飲みやすさを高めるのは有効です。
家庭用の浄水ポットや、蛇口に取り付けるタイプの浄水器を使えば、カルキ臭の軽減や不純物を除去できます。ろ過された水は風味がまろやかになるため、犬にとっても飲みやすく感じられるでしょう。
ただし、浄水された水は時間が経つと雑菌が繁殖しやすくなります。衛生面を保つためにも、飲み残しは放置せず、定期的に新しい水と交換することをおすすめします。
犬に与えてはいけない水

犬に与えてはいけない水としては、主に以下のものが挙げられます。
- 硬水
- 自然の水
- フレーバーウォーター
繰り返しになりますが、硬度が高い「硬水」は、犬の体に負担をかける可能性があるため、避けた方がよいとされています。また、井戸水や川の水といった衛生面に不安がある自然の水も与えないようにしましょう。
フルーツの風味がついたフレーバーウォーターのように、人間が好む水でも犬にとっては体調不良につながる可能性があります。フレーバーウォーターには香料や甘味料など犬にとって不要な成分が含まれていることが多く、体に悪影響を及ぼすリスクがあります。
さらに、長時間放置された水や、開封してから時間が経ったボトルの水は、雑菌の繁殖や風味の劣化が起きやすく、衛生面でもリスクが生じるため与えない方が賢明です。愛犬の健康を守りたいのであれば、余計な成分が入っていない、新鮮でシンプルな水を選んであげることが大切です。
犬の年齢や体調に合わせた水の与え方とは?

犬の年齢や体調によっても、水の与え方は異なります。ここでは、子犬・シニア犬・持病のある犬の3つのケースに分けて、それぞれに合った水の与え方をご紹介します。
- 子犬
- シニア犬
- 持病がある犬
子犬
子犬は体が未発達で免疫力も低いため、刺激の少ない軟水を選び、常温で与えるようにしましょう。冷たい水はお腹を壊す原因になることもあるので、避けたほうが賢明です。
また、体が小さい分脱水のリスクも高いため、こまめに新鮮な水を用意してあげることが大切といえます。
シニア犬
シニア犬は加齢によって代謝が落ち、腎臓や肝臓などの機能も低下しやすくなります。そのため、子犬と同じく体にやさしい軟水を常温で与えるのが基本です。
水分の摂取量が減っていると感じた場合は、水気を多く含む食事を取り入れたり、ぬるめの白湯を与えたりするなど、無理なく水分補給ができる工夫をしてみましょう。
持病がある犬
持病がある犬にミネラルウォーターを与える際には、獣医師の指導を受けながら慎重に選ぶことが重要です。特に腎臓や心臓に疾患がある場合、ナトリウムやミネラルを過剰摂取すると症状の悪化を引き起こすおそれがあります。
ミネラル分の少ない軟水を常温でこまめに与え、飲み残しは早めに交換するなど衛生管理にも十分な注意を払いましょう。
犬に水を与える際のよくある質問
犬に水を与える際によくある質問と回答を、以下にまとめます。
Q.誤って硬水を与えてしまったらどうすればよいですか?
一度や少量の硬水を飲んだだけであれば、過度に心配する必要はありません。硬水に含まれるミネラル分は、尿路結石の原因となる可能性が指摘されていますが、これはあくまで長期的に硬水を飲み続けた場合のリスクです。
健康な犬が一時的に飲んだとしても、すぐに健康に影響が出ることはほとんどないと考えられています。
Q.犬に炭酸水を与えても大丈夫ですか?
犬に炭酸水を与えることは、少量であれば基本的に問題ないとされていますが、積極的に与えるメリットはありません。与えすぎると胃腸へ負担をかけてしまうリスクがあるため、基本的には炭酸水を与えるのは控えましょう。
また、炭酸水であってもフレーバーがついたものはNGです。コーラやサイダーのような炭酸飲料も、絶対に与えないでください。
Q.犬が1日に必要な水の量は?
基本的に、犬が1日に必要な水の量は体重1kgあたり約40~60ml程度です。
- 体重5kgの犬:200~300ml
- 体重10kgの犬:400~600ml
しかし、これはあくまで一般的な目安で、季節や運動量、年齢や健康状態などによって必要な量は異なります。普段の様子を観察しながら、適切な水の量を与えてあげましょう。
犬にとって安全なミネラルウォーターを選ぼう
ミネラルウォーターを犬に与える際には、種類や成分をしっかり確認することが大切です。ミネラルが多すぎる硬水や香料・添加物入りの水は避け、硬度100mg/L未満の軟水を選ぶようにしましょう。さらに、ペット専用の製品や浄化した水道水の利用もおすすめです。
また、犬の年齢や体調によっても、必要な配慮は変わってきます。安全に飲める水を選ぶことが愛犬の健康につながります。