チョコレートを食べていると、猫が包装紙の匂いを嗅いだり舐めたりすることがあります。そんな姿を見て、「猫がチョコを食べたらどうなるのだろう」と疑問に思ったことがある方は多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、猫がチョコを食べた際に考えられる症状と対応について解説しています。猫に与えてはいけない食品もまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
猫がチョコレートを食べるとどうなる?

まずは、猫がチョコレートを食べてしまった場合にどうなるかを確認しておきましょう。
中毒症状を起こす可能性がある
猫がチョコレートを食べると、テオブロミンやカフェインといった、キサンチン類によって中毒が引き起こされる可能性があります。とくにテオブロミンは、猫の体内で分解されにくく、少量でも蓄積するため危険です。
また、猫がテオブロミンを摂取した場合、神経系や心臓に影響を及ぼすことがあり、食後2〜12時間ほどで中毒症状が現れるとされています。これらの成分は、一般的にホワイトチョコよりも高カカオチョコやココアに多く含まれているので、とくに注意点が必要です。
注意すべき症状
猫がチョコレートを摂取した際、以下のような症状が見られたらすぐに動物病院を受診してください。
- 嘔吐
- 下痢
- 過剰なよだれ
- 興奮
- けいれん
これらを放置すると、重篤な症状に発展しかねず、場合によっては昏睡や死に至る危険もあります。猫の様子を観察し、いつもと違う行動をとる、元気がないといった軽微なサインも見逃さないように気を配りましょう。
危険なチョコの量
猫にとって危険なチョコレートの量は、体重やチョコの種類によって異なりますが、一般的に体重1kgあたりテオブロミン20mg以上で中毒症状が現れるとされています。そのため、万が一200mg/体重1kg以上を摂取してしまった場合には、命の危険も生じるでしょう。
たとえば、ダークチョコレートには100gあたり300mg以上のテオブロミンが含まれていることがあり、体重3kgの猫にとっては、たった10gでも中毒のリスクがあります。とくに子猫は、1かけらでも中毒症状が出る可能性があるため注意してください。
猫がチョコを食べてしまったらどうする?

万が一猫がチョコを食べてしまったら、冷静に状況を確認し、必要に応じて動物病院を受診してください。以下、いざというときの対応を見ていきましょう。
状況を確認する
猫がチョコレートを食べたかもしれないと気づいたら、まず冷静に状況を確認しましょう。重要なのは、「どの種類のチョコを」「どれくらい」「いつ頃食べたか」の3点です。
前述のとおり、ダークチョコレートやココアにはテオブロミン、カフェインが多く含まれるので、危険度が高くなります。包装が残っていれば、チョコの種類や内容量を確認し、食べた量を推定してください。
また、猫の体重も把握しておくと診察時に役立ちます。すでに嘔吐、震えといった異変が見られる場合は、速やかに動物病院に連絡してください。
病院で受診する
状況を把握したら、すぐにかかりつけの動物病院、または24時間対応の救急動物病院に連絡を入れましょう。その際は、以下の点をできるだけ正確に伝えることが大切です。
- いつ、何を、どのくらい食べたか
- 猫の体重
- 現在の様子(症状)
症状や摂取量によっては、すぐに連れてくるよう指示されることもありますし、経過観察で済むケースもあります。病院に行く際は、チョコの包装を一緒に持って行くと獣医師が判断しやすいでしょう。
吐しゃ物や排泄物がある場合は、指示に従い写真を撮るか、ビニール袋に入れて持参してください。
茶屋ヶ坂動物病院|救急救命科のご案内無理に吐かせようとしない
チョコを食べてしまった猫に対して、「すぐに吐かせたほうがいいのでは?」と思うかもしれませんが、無理に吐かせるのはとても危険です。たとえば、塩水などによる催吐処置はリスクが高く、腎不全や粘膜の損傷を引き起こすことがあります。
もし吐かせる必要がある場合は、獣医師が安全な薬を使って処置を行うため、飼い主が無理に吐かせようとしてはいけません。焦る気持ちはわかりますが、飼い主の冷静で適切な判断が猫の命を守ります。
猫はチョコレートが好き?

猫は、一般的にチョコレートを好んで食べることはありません。これは、人間のように甘味を感じる味覚受容体を持っていないため、チョコレートの甘さに魅力を感じないためです。
ただし、次のような理由でチョコレートを口にしてしまう可能性があります。
- ニオイや好奇心に反応する
- 人間が食べているものに興味がある
- いたずらによる誤食
チョコレートにはミルクや油脂が含まれているので、動物性の香りが猫を惹きつけます。とくに、バターの香りが強い洋菓子などは、猫が興味を示しやすい食べ物です。
また、飼い主が食べている物に興味を示す猫も多く、匂いを嗅いだり舐めたりしてしまうケースは珍しくありません。このほか、包装の音につられて袋を噛むなど、遊び半分でチョコを口にしてしまうケースも考えられます。
家でできる誤食対策

猫が人間の食べ物を誤食しないためには、食材の保管場所に気を配るほか、家庭内でルールを決めることが大切です。
食べ物の保管場所に注意する
猫は好奇心が強く、匂いの強い食べ物や、音の鳴る包装紙などに興味を持ちやすいです。包装を破いて中身を食べてしまうこともあるため、チョコレートやお菓子類をテーブルなどに放置しておかないようにしましょう。
食べ物は密閉できる容器に入れ、猫が開けられない戸棚や、引き出しの中にしまってください。また、ゴミ箱も注意が必要なため、フタ付きでロックできるものを使い、チョコの包装紙などはすぐに処分するのがおすすめです。
人間の食べ物は与えない
猫に人間の食べ物を与える習慣は、中毒のリスクを高めるだけでなく、誤食のきっかけにもなります。チョコレートに限らず、猫に有害な食べ物は少なくありません。
飼い主がそれらを把握していなければ、知らずに与えてしまうケースもあるでしょう。とくにおやつタイムなど、家族がリラックスしているときは要注意です。猫が欲しがっても人間の食べ物は与えず、専用のおやつやフードで満足させるよう心がけてください。
家族全員で「猫に人間の食べ物を与えない」というルールを共有し、徹底することが大切です。
チョコだけじゃない!猫にとって危険な食品

猫にとって有害な食べ物は、チョコレートだけではありません。誤食によって健康被害が起こらないよう、危険な食品を把握しておきましょう。
ネギ類
ネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物は、猫の赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こす可能性があります。この成分は加熱しても分解されないため、スープなどに含まれていても危険です。
主な症状は以下のとおりですが、発症までに数時間~数日かかることもあり、原因に気づかないケースも少なくありません。
- 食欲不振
- 歯茎や舌が白っぽくなる(貧血)
- 嘔吐や下痢
- 血尿 など
ネギや玉ねぎ、にら、ニンニクなどは、少量でも症状が出ることがあるため、絶対に与えないでください。
ブドウ
ブドウは、腎障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。猫では中毒症例が少ないものの、潜在的なリスクは犬と同様に高いとされています。
ブドウを食べてしまった場合の主な症状は以下のとおりで、進行すると命に関わります。
- 嘔吐や下痢
- 食欲の消失
- 頻尿・無尿
- 脱水
ブドウだけでなく、パンやお菓子に含まれるレーズンや、ブドウジュースのようなブドウを使った食品も危険なので、誤って食べてしまわないように気をつけましょう。
アボカド
アボカドに含まれる成分は、一部の動物に対して毒性を持っています。猫の場合、犬や鳥に比べると中毒性は低いとされていますが、大量摂取や個体差により、消化器症状が見られることがあります。
皮や種に強い毒性があり、誤飲した場合には窒息、腸閉塞の危険も考えられます。観葉植物として育てている家では、葉も食べないように注意しなければなりません。
猫にチョコレートは与えないでください

猫がチョコレートを食べてしまうと、その成分によって中毒を起こし、場合によっては深刻な状態になる可能性があります。もし食べてしまったら、冷静に状況を確認し、動物病院の指示に従って行動しましょう。
猫にとって危険な食べ物はほかにもあるため、誤食を招かないよう、収納場所を工夫したり、人間の食べ物を与えないようにしたりすることが大切です。