「猫が何日も排便していない」
「トイレでいきむ様子が続いている」
そんなときに疑われるのが「便秘」です。放置すると体調悪化や重篤な病気につながることもあるため、早めの対処が重要です。
本記事では、猫の便秘の原因や症状、家庭でできるケアや動物病院での治療法などを詳しく解説します。
猫の便秘のチェックポイントとは?

愛猫の「うんち」や「いつもの様子」は、健康のバロメーター。特に便秘のサインは、早期発見が何よりも大切です。日頃からチェックしておきたい、便秘を見抜くためのポイントを5つご紹介します。
排便の回数
猫は通常、1日に1〜2回ほど排便するのが一般的です。明確な便秘の定義はありませんが、排便の回数が普段より少なくなった場合は注意が必要。
特に、丸3日以上うんちが出ていない場合は便秘の可能性が高く、5日以上排便がない状態が続けば、ほぼ便秘と判断されます。
便の硬さ
猫の便は、水分量によって硬さが変わります。理想的な便は適度な湿り気があり、形が崩れず猫砂が軽くつく程度の状態です。一方、カチカチでコロコロと小さい便、つまみにくいほど硬い便は便秘のサインといえます。
また、下腹部にゴロゴロとした感触があり、触れられるのを嫌がる場合も便秘の可能性があるため注意が必要です。
排便の姿勢
排便の姿勢をとっているのに便が出ない、普段より長く踏ん張っている、排便時に苦しそうに鳴くといった様子が見られる場合は、便秘が疑われます。また、便が出きらずに何度もトイレに出入りする行動もよくあるサインのひとつです。
便の色
健康な猫の便はフードの色に近い茶色で、ほどよい湿り気とツヤがあります。一方、うんちの色が赤や黒、緑っぽいなどいつもと違う場合は、便秘以外の可能性もあるため要注意です。
黒くてドロッとした便は胃や小腸からの出血、赤い便は大腸や直腸からの出血が疑われます。また、白や灰色っぽい便は胆汁や膵臓の異常、緑色は消化不良の可能性があるため、早めに動物病院を受診した方がいいでしょう。
猫の様子
排便時にいきむ、食欲が落ちる、嘔吐するなど、猫にいつもと違う様子が見られる場合は、便秘の可能性があります。
また、食欲があるのに排便がないときも注意が必要です。元気がない、落ち着かずウロウロする、いつもと違う姿勢で休むといった様子が見られる場合は、不快感や痛みを感じている可能性があるため、獣医師の診察を受けることをおすすめします。
猫の便秘の主な原因とは?

愛猫の便秘、その背景にはどんな理由があるのでしょう?考えられる主な原因は下記の通りです。
水分不足
猫の便秘の原因として代表的なものが水分不足です。
猫は砂漠地帯に生息していたリビアヤマネコを祖先に持ち、もともと水をあまり飲まなくても生きられる体のつくりをしています。そのため、室内で暮らし、ドライフードを中心に食べていると、自然と水分摂取量が不足しやすくなります。
摂取する水の量が足りないと便の水分量も減り、硬くなって排泄されにくくなった結果、便秘を引き起こしてしまうのです。
毛玉症
毛玉症とは、猫が毛づくろいの際に飲み込んだ毛が胃や腸に溜まり、毛玉となって排出されずに体内に留まってしまう状態を指します。毛玉が蓄積すると腸を塞いで排便を妨げ、便秘の原因となることがあります。
特に、ペルシャやヒマラヤンなど長毛種の猫や、春や秋などの換毛期は注意が必要です。また、消化器疾患のある猫やシニア猫も毛玉症になりやすいとされています。
運動不足
運動不足も、猫の便秘を引き起こす原因のひとつです。運動量が足りないと腸の蠕動運動が低下し、便が腸内にとどまりやすくなります。さらに、排便に必要な筋力も衰えるため、うまく便を押し出せず、便秘のリスクが高まります。
中でも高齢の猫は活動量が減りやすく、慢性的な運動不足に陥りやすいため、便秘を起こしやすい傾向があります。
ストレス
猫は環境の変化や刺激に敏感な動物です。引っ越しやトイレ環境の変化、新しいペットとの同居などは、猫にとってストレスの原因になります。
ストレスによって自律神経が乱れると腸の動きが低下し、排便がうまくできなくなります。また、トイレが汚れていたり場所が気に入らなかったりすると、排便を我慢してしまい、便秘を引き起こすことがあるのです。
遺伝的な要因
猫の便秘には、遺伝的な要因も関与することがあります。体格や腸の長さといった遺伝的な要素により、排泄機能が低い猫が存在し、便秘になりやすい傾向があります。
特に、生まれつき尻尾が短いマンクスという品種は、尻尾や腰回りの骨格の影響で排便する力が弱く、便秘を起こしやすいことが知られています。
加齢による腸機能の低下
猫は加齢に伴い、様々な体の機能が低下しますが、腸の機能も例外ではありません。高齢になると、腸の蠕動運動が弱まり、便を肛門へと運ぶ力が低下するため、便が腸内に停滞しやすくなります。
また、加齢による運動量の減少や筋力低下も、排便に必要な力を弱め、便秘のリスクを高めます。さらに、関節炎などの疾患により排便時の体勢をとることが困難になることも、加齢に伴う便秘の原因の一つとして考えられます。
そのため、高齢の猫は便秘になりやすい傾向があり、日頃から排便の様子を注意深く観察することが大切です。
病気
猫の便秘の原因として、病気が関係しているケースも多く見られます。中でも代表的なのが「巨大結腸症」です。これは、便が長時間結腸に滞留することで腸が拡張し排便が困難になる病気で、さまざまな原因での便秘が引き金となります。
特に注意が必要なのは、骨盤狭窄や腫瘍、異物、肛門の痛みなどを原因とした器質性便秘です。病気が原因の便秘は命にかかわる可能性もあるため、早期の対応が重要です。
家庭でできる猫の便秘ケア

愛猫が便秘気味かなと感じたら、まずはご家庭でできるケアを試してみることが大切です。日々の暮らしの中で少し工夫を加えることで、愛猫の不快感を和らげ、スムーズな排便を助けることができるかもしれません。ここでは、食事の工夫からスキンシップを活用したケアまで、主な方法をご紹介します。
フードを工夫する
毎日のフードに少し工夫を加えることは、猫の便秘ケアに有効です。
たとえば、いつものフードに少量のオリーブオイルを加えると、便が柔らかくなって便秘の解消につながります。また、水に溶けやすい「可溶性食物繊維」を含むフードへの切り替えや猫草の活用も効果的です。
ただし、フードを変更する場合は猫にゆっくり慣れさせるため、徐々に行うようにしましょう。
水分補給
猫の便秘ケアには、こまめな水分補給も欠かせません。常に新鮮な水を用意し、設置場所や器に工夫をするなど、猫が水を飲みやすい環境を整えることが大切です。
また、ウェットフードやスープを取り入れる、冷水をぬるま湯に変える、鶏のゆで汁を水に加えるなどの対策も効果的とされています。
一般的には、体重1kgあたり1日約50mlの飲水が目安とされており、水分摂取量を増やすことで排便をスムーズにする効果が期待できます。
マッサージやツボ押し
猫の便秘にはマッサージやツボ押しも効果的です。猫がリラックスした状態で脇腹やおなかを撫でたり、「の」の字を描くようにさすることで腸の動きを促します。
おなかを触られるのが苦手な猫には、後ろ足の付け根のマッサージもおすすめ。また、整腸作用のある「百会」や腸の働きを助ける「神門」といったツボを30秒ほど優しく刺激することで、便秘の緩和に役立ちます。
動物病院での検査と治療
フードの工夫や水分補給、マッサージなどを行っても便秘が改善しない場合は、動物病院を受診して獣医師の診察を受けましょう。
茶屋ヶ坂動物病院|消化器科のご案内受診の目安
猫が3日以上排便していない場合は、便秘の可能性があるため動物病院の受診を検討しましょう。特に、嘔吐、食欲不振、元気がないなどの症状がみられる場合は要注意です。
検査内容
猫の便秘が疑われる場合、動物病院では触診を行い、腹部や骨盤の状態を確認します。また、便検査や血液検査を行い、脱水の有無や全身の健康状態をチェックします。
さらに、必要に応じてレントゲン検査や超音波検査を実施し、腸内の便のたまり具合や、骨盤腔・腹腔内の異常の有無を調べます。
これらの検査結果をもとに、便秘の原因や重症度を総合的に判断して適切な治療方針を決定します。
治療方法
猫の便秘が確認されたら、まずは浣腸や緩下薬で便を柔らかくし、排出を促します。それでも改善が見られない場合には、肛門から便を掻きだす「摘便」という処置が行われることもあります。
便秘が慢性化している場合は、食事療法や緩下薬の内服、水分補給の強化、飼育環境の見直しなど、継続的な対策が必要です。
また、重度の便秘や巨大結腸症が疑われる場合には、外科手術が必要となることもあります。
猫の便秘は早期発見と適切な対処が大切
猫の便秘は、フードや水分不足、運動量、ストレス、病気などさまざまな原因で起こります。日頃から排便の回数や便の状態、猫の様子を観察することで、早期に異変に気づくことができます。
家庭でのケアに加え、改善が見られない場合は早めに動物病院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
