愛くるしい見た目や仕草で人気の猫ですが、猫に寄生するノミは、猫の健康や家族の生活環境に影響を及ぼす厄介な存在です。強いかゆみや皮膚炎を引き起こすだけでなく、放っておくと家の中で増殖し、人間にも被害が及ぶ可能性があります。
本記事では、猫に寄生するノミの種類や症状、効果的な駆除・予防方法、そして人への影響について詳しく解説します。
猫に寄生するノミとは?

猫に寄生するノミは、猫の健康に悪影響を与える厄介な存在。放っておくと爆発的に繁殖する可能性があります。ここでは、猫によくつくノミの種類や繁殖のスピード、ノミが好む環境について詳しくご紹介します。
猫につきやすいノミの種類
猫に寄生するノミのほとんどは「ネコノミ」という種類です。ネコノミは猫だけでなく、犬や人間にも寄生することがあり、特にアレルギー反応を引き起こしやすい特徴を持っています。体長は1.5〜3mmほどで、素早く移動しながら血を吸う吸血虫です。
ノミのライフサイクルと繁殖スピード
ノミは短期間で急激に増殖します。吸血後24〜48時間以内に産卵し、落下した卵は数日で孵化。幼虫はフケや食べかすを栄養にして育ち、1〜2週間ほどで成虫になります。
また、1匹のメスは一生のうちで数百もの卵を産むと考えられています。
ノミが好む環境
ノミが好むのは、温度20〜30℃・湿度70%前後の高温多湿な環境です。カーペットや畳、ソファの隙間など、暗くてホコリがたまりやすい場所に潜み、繁殖を繰り返します。
最近は住まいの断熱性が向上し、冬でも室内が暖かいため、季節を問わずノミが発生するようになっています。
ノミが猫に引き起こす症状

小さな虫であっても、その影響は決して侮れません。ノミが引き起こす症状は大きく分けて次の2つ。放置すると猫の暮らしに深刻なストレスや健康リスクをもたらします。
かゆみ
ノミに刺されると、猫は強いかゆみを感じ、後ろ足で体を掻いたり、舐めたり噛んだりする仕草が見られるようになります。かゆみによるストレスから、落ち着きがなくなることも少なくありません。
さらに、ノミの唾液に含まれるタンパク質が原因で「ノミアレルギー性皮膚炎」を発症することも。炎症や赤い発疹などが見られ、搔きむしった傷から細菌感染を引き起こすリスクもあるため、早めの対処が大切です。
貧血
ノミが大量に寄生して吸血を繰り返すと、猫が貧血を起こすこともあります。特に、子猫や高齢猫は注意が必要です。
元気がなくなる、食欲が落ちる、粘膜が白っぽくなるといった症状が見られた場合は、できるだけ早く動物病院で診察を受けましょう。粘膜には鼻や口といった部位が挙げられますが、特に歯ぐきを見ると変化がわかりやすいです。
猫にノミがいるかどうかを見分ける方法
小さなノミでも、早期発見が愛猫の健康を守るカギとなります。以下のチェック方法でしっかり観察してみましょう。
被毛や皮膚をチェックする
猫の腰回りや股の内側は、ノミが寄生しやすい代表的な場所です。被毛をかき分けて、皮膚に赤みや発疹、かさぶた、脱毛などの異常が見られないかをチェックします。
また、ノミ自体を目視で確認できる場合もあります。猫が頻繁に掻いている部位は、特に注意して観察するのがポイントです。
ノミのフンを探す
ノミのフンは黒っぽい小さな粒状で、猫の被毛の根元や皮膚に付着していることがあります。
白い布や紙の上で猫をブラッシングし、落ちた黒い粒を湿らせたティッシュに乗せてみてください。赤茶色ににじむ場合は、ノミのフンである可能性が高いです。
猫の行動を観察する
ノミに寄生されると、猫は強いかゆみを感じ、頻繁に体を掻いたり、舐めたり、噛んだりする行動が増えます。また、落ち着きがなくなったり、普段とは異なる行動をとることもあります。
猫のノミを駆除するにはどうすればいい?

ノミ駆除をするには正しい知識をもって適切に対処することが重要。「駆除」と「予防」の両方を意識してノミ対策を行いましょう。
以下、主要な方法を3つご紹介いたします。
ノミ取りシャンプーを使う
ノミ取りシャンプーは、猫の体についたノミやフン、卵などを洗い流すのに効果的です。専用のシャンプーを使うことである程度のノミ取り効果が期待できます。
シャンプー後はタオルやドライヤーを使ってしっかり毛を乾かし、ノミ取り用のクシで丁寧にブラッシングすると効果的です。ただし、シャンプーだけで被毛の奥にある卵までは除去しにくく、完全に駆除するためには別の方法と併用する必要があります。
動物病院を受診する
動物病院を受診するのも、猫のノミを駆除するのに有効な方法です。ノミ取りシャンプーでは不十分なこともあるため、獣医師の診察を受けたうえで、猫の体調や症状に適した駆除薬を処方してもらいましょう。
動物病院で処方されるスポットタイプや経口タイプの薬剤は、1回の使用で1〜2ヵ月効果が持続し、再発を予防する効果もあります。また、猫のノミには寄生虫感染など合併症のリスクもあるため、専門的な診断と治療を受けた方が安心です。
茶屋ヶ坂動物病院|予防・ワクチンのご案内飼育環境を整える
猫にノミが発生した場合は、飼育環境を見直すことも大切です。床やカーペット、マットの下などを念入りに掃除し、猫の寝具は40℃以上のお湯で洗濯をしてから乾燥機でよく乾かしましょう。
さらに、日頃から換気を心がけて室内の湿度を下げることも、ノミの繁殖予防につながります。また、猫を外に出す・散歩させる・ベランダなどに出すことで、ノミに寄生されるリスクは高まります。猫を外に出さないことが最も有効なノミ予防です。
飼育環境の整備と猫のケアを両立させることがノミ対策のポイントです。
猫のノミは人間にも影響する?
猫のノミは人間にも影響します。ネコノミが人間につくと、かゆみや赤み、水ぶくれなどの症状を引き起こすだけでなく、ノミの唾液によるアレルギー反応、ノミが媒介する「猫ひっかき病」や「瓜実条虫症」に感染するリスクもあります。
中でも、小さな子どもや高齢者、アレルギー体質の人は、症状が強く出る恐れがあるため注意が必要です。このように、ノミは猫だけでなく人間にも有害であるため、家庭全体での予防と対策が重要といえるでしょう。
猫と家族の健康を守るために、ノミについて正しい知識を持とう
猫に寄生するノミは、皮膚の炎症や貧血などの健康被害を引き起こすだけでなく、生活環境にも深刻な影響を及ぼす危険があります。また、猫だけでなく人や犬にも寄生し、アレルギーの原因になったり、感染症を媒介する恐れもあるため注意が必要です。
ノミは高温多湿を好み、空調が効いた室内では季節を問わず発生するため、一年を通して対策が求められます。虫が多く発生する夏だけ対策して、冬は対策しないという方もまだまだ多く見られますが、現代では予防薬を一年分与えることが望ましいです。
ノミ取りシャンプーの使用や動物病院の処方薬など駆除方法はさまざま。しっかりとした効果を得るためには複数の対策を組み合わせることが大切です。
猫と家族の健康を守るためにも、ノミに関する正しい知識を持ち、早めの対応を心がけましょう。