昔から、犬は人間にとってとても身近な存在で、その賢さに驚かされることも少なくありません。では、犬の知能は人間の何歳レベルなのでしょう。
今回のコラムでは、犬の脳の構造や記憶力の仕組み、知能のタイプや賢い犬種ランキングなどをわかりやすく解説していきます。
犬の知能は人間の2~3歳児程度

犬の知能は、人間の2〜3歳児程度だといわれています。200語以上の言葉を理解できるほか、「おすわり」「まて」といった二語の指示にも反応が可能です。人の表情や仕草から感情を読み取る力もあり、犬種によっては簡単な計算ができることも。こうした特徴から、犬は幼い子どもと同じくらいの知能を持っていると考えられています。
犬の脳と人間の脳の違いとは?
犬は人間と異なる脳の構造や感覚機能を持っており、その違いが行動や学習、感情の表現に大きく関わっています。
特に以下の3つの特徴に注目すると、犬がどのように世界を認識し、人と関わっているのかが見えてきます。
構造の違い
犬の脳は人間に比べて大脳新皮質が小さく、論理的な思考や抽象的な概念の理解はあまり得意ではありません。
一方、本能や感覚に関わる領域が発達しており、状況に応じた直観的な判断や反応に優れた能力を発揮します。こうした構造の違いが、犬の行動や学習方法に大きな影響を与えています。
感情を読み取る能力
犬は、人間の声のトーンや表情、仕草などから感情を読み取る能力に長けています。特に、飼い主の不安やストレス、怒りには敏感に反応します。
飼い主が悲しんでいるときはそっと寄り添ったり、うれしいときは一緒に喜んだりと、共感的な行動を見せることも珍しくありません。
嗅覚の発達
犬の嗅覚は人間の約1万倍ともいわれており、においを通じてさまざまな情報を得ることができます。犬は人間に比べて鼻の奥にある「嗅上皮」や、においの情報を処理する脳の「嗅球」が発達しているからです。
こうした能力は、警察犬やセラピー犬として活躍するうえで大きな強みとなっています。
犬の記憶力の仕組み

犬の記憶力は、人間とは異なる仕組みを持っています。なかでも「どのくらいの時間、どんな記憶を保持できるのか」という点において、大きな違いが見られます。
犬の記憶力について、次の2つの観点から詳しく見ていきましょう。
短期記憶
短期記憶とは、数秒から数分、長くても数十分程度のあいだだけ情報を一時的に保持する記憶のことです。人間の短期記憶は数秒~数十分持続し、同時に5〜9個程度の情報を記憶できるとされています。
一方、犬は数秒から1、2分程度の能力しかなく、記憶の保持時間が人間に比べてはるかに短い点が特徴です。
長期記憶
長期記憶とは、数分から数年、場合によっては一生にわたって保持される記憶のことです。犬は短期記憶が苦手な反面、長期記憶には優れており、経験や繰り返しの行動によって記憶を定着させます。
なかでも、おやつをもらったうれしい体験や、注射をされたときの嫌な出来事など、感情と結びついた記憶は長く残りやすいとされています。
犬種によって知能のタイプは異なる

犬の知能は一括りにされがちですが、実は犬種によってタイプや傾向は異なります。性格や役割の違いから、指示に忠実なタイプ、自主性の高いタイプ、作業に特化したタイプなど、それぞれに得意分野があります。
ここでは、犬の知能のタイプを大きく3つに分けて紹介します。
服従性に優れる犬
服従性に優れる犬とは、飼い主の指示をよく理解し、忠実に従う性質を持つ犬のことです。落ち着いた性格で賢く、社会性がある犬ほど、その傾向が強くなります。
知能が高い犬は指示を早く覚え、他の犬や人間とも良好な関係を築けるため、トレーニングにも前向きに取り組めます。また、過去の経験や学習を活かして行動できることも、服従性の高さにつながります。
独立性に優れる犬
独立性に優れる犬は、自己判断力が高く、自分の意志で行動する傾向があります。指示を待つのではなく自発的に動くタイプで、従順さよりも自由な行動を重んじます。
こうした犬は強い自立心を持ち、ときには命令に従わないこともありますが、それは知能や主体性が高い証拠です。無理に従わせようとせず、信頼関係を築きながら適切な距離感で接することが大切といえます。
作業性に優れる犬
作業性に優れる犬は、高い知性と集中力を持ち、飼い主の指示に的確に反応する能力に優れています。もともと牧羊や救助などの役割を担ってきた歴史があり、学習意欲や訓練への適応性が高いのが特徴です。
活発で運動量が多く、適切なトレーニングと運動が不可欠な点も特徴の一つ。人間との信頼関係を大切にする性格を活かせば、さまざまな場面で能力を発揮します。
賢い犬種ランキングトップ5
犬の中には、特に知能が高く、しつけのしやすさや人間との協調性に優れた犬種がいます。その中でも特に賢いとされる5つの犬種を厳選して紹介します。
ボーダーコリー

ボーダーコリーは、全犬種の中でも特に知能が高く、忠誠心の観察力に優れた犬種です。飼い主に対して一途で従順な性格を持ち、ドッグスポーツでは常に上位に名を連ねる実力の持ち主として知られています。
中型犬でありながら、反射神経、瞬発力、持久力すべてに秀でており、作業能力も非常に高いのが特徴。知性と体力を兼ね備えた理想的なパートナーといえるでしょう。
プードル

プードルは賢く社交的で、家庭犬として非常に人気の高い犬種です。しつけがしやすく、人間と一緒に過ごすことを好むため、初心者にも飼いやすい犬といえます。
かつては水鳥の回収を行っていた狩猟犬で、水遊びや物を取ってくる遊びも得意です。抜け毛が少なく体臭も控えめなため、アレルギー体質の方でも比較的安心して飼育できます。
また、定期的にトリミングによって多彩なカットスタイルが楽しめる点も魅力の一つです。
ジャーマンシェパード

ジャーマンシェパードは、高い知能と忠誠心、警戒心を兼ね備えた職業犬の代表格です。日本では警察犬や救助犬として活躍しています。
指示に対して冷静かつ的確に反応し、責任感や勇敢さも持ち合わせているため、訓練次第で幅広い分野に適応可能です。初対面の相手には慎重に接する反面、信頼関係が築ければとても頼れる存在になります。
ゴールデンレトリバー

ゴールデンレトリバーは、穏やかで人懐っこい性格と高い知能をあわせ持つ犬種です。飼い主に忠実で、人間と一緒に行動することを喜びとし、他の動物とも友好的に接することができます。
また、学習能力が高く、盲導犬や介助犬などのサービスドッグとしても活躍しています。水鳥猟の歴史を持つため、水遊びを好み、活発で運動好きな一面も。ストレスをためないためにも、日常的にしっかりと運動の時間を確保することが求められます。
ドーベルマン

ドーベルマンは、筋肉質で引き締まった体と気品ある立ち姿が特徴の大型犬です。学習能力が高く、しつけにもよく反応するため、訓練次第で非常に優秀なパートナーになります。
穏やかで従順な性格を持つ反面、警戒心と防衛本能が強く、見知らぬ相手には攻撃的になることもあるため、子犬の頃からのトレーニングが重要です。
知性と冷静さをあわせ持つ、忠誠心の高い犬種といえます。
犬の知能と特徴を正しく理解しよう
犬は人間とは異なる脳の構造や感覚機能を持ち、それが行動や学習スタイルに大きく影響しています。また、犬種によって得意分野や知能のタイプが異なるため、それぞれの性格や特徴を理解することが、より良い関係を築く第一歩となります。
犬の知能と特徴を正しく理解することが、信頼を深めるためには大切です。