愛犬との楽しい散歩中、突然歩くのを辞めてしまったり、座り込んで動かなくなったりしてしまったという経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。愛犬が散歩中に歩かなくなったり、散歩を拒んだりするのにはどのような理由があるのか、気になる人も多いと思います。

そこで今回は、犬が散歩中に歩かなくなってしまう理由や対処法、NG行動などについて詳しく解説します。

犬が散歩中に歩かなくなる理由

犬が散歩中に立ち止まったり、座り込んでしまったりして歩かなくなることには、いくつかの理由が考えられます。愛犬の行動から、そのサインを読み取ることが大切です。

  • 身体的な不調や痛み
  • 精神的なストレスや恐怖
  • 疲れや暑さ・寒さ
  • モチベーション低下

身体的な不調や痛み

散歩中に犬が急に動かなくなる場合、どこかに痛みを感じていたり、体調が悪かったりする可能性があります。例えば、足の関節炎や怪我、肉球の炎症、爪の伸びすぎなどが原因で歩くのを嫌がるケースは多いです。

また、心臓病や呼吸器系の問題、熱中症などで体力が低下していると、途中で動けなくなってしまうこともあります。高齢犬の場合は、筋力の衰えや関節の痛みから散歩を億劫に感じることも少なくありません。

普段の様子と比べて元気がない、足を引きずるなどの症状が見られる場合は、動物病院での診察をおすすめします。

精神的なストレスや恐怖

特定の場所や物、音に対して強い恐怖心やストレスを感じている場合も、犬は歩かなくなります。例えば、大きなトラックの音、見慣れない人や犬、苦手な場所を通りかかる際などに、不安から立ち止まってしまうことがあるでしょう。

過去に嫌な経験をした場所では、トラウマから歩くのを拒否することもありますし、散歩自体が苦手な犬もいます。雷や花火の音など、突発的な大きな音に驚いて動けなくなるケースも珍しくありません。

疲れや暑さ・寒さ

人間と同様に、犬も疲労や気候の変化によって散歩を中断することがあります。特に、夏場の暑い日中や冬場の極端に寒い日は、熱中症や低体温症のリスクがあり、体力を消耗しやすいため注意が必要です。

子犬や老犬は特に体温調節が苦手なため、散歩の時間帯や長さを考慮することが大切です。いつもより散歩の距離が長すぎた、普段あまり運動していないのに急に長時間の散歩をした、といった場合も、単純に疲れて動けなくなってしまうことがあります。

無理強いせず、休憩を取り入れるようにしましょう。

モチベーション低下

犬にとって散歩が単調でつまらないものになっていると、モチベーションが低下して歩かなくなることがあります。いつも同じ道を同じペースで歩くだけでは、刺激が少なく飽きてしまうことも珍しくありません。

また、散歩の時間や回数が犬の運動量と合っていない場合も考えられます。例えば、運動量の多い犬種なのに散歩が短い、逆に運動量が少ない犬種なのに長すぎる、といったケースです。

他の犬や人との交流が少ない、新しい匂いを嗅ぐ機会がないなども、散歩への意欲を低下させる要因になり得ます。

犬が散歩中に歩かない場合の対処法

犬が散歩中に歩かなくなってしまった場合は、その理由ごとに適切な対処は異なります。ケースに合わせて適切に対処しましょう。

身体的な問題が疑われる場合

もし愛犬が急に歩かなくなったり、足を引きずったり、明らかに痛がっている様子が見られたりする場合は、無理に散歩を続けず、すぐに散歩を中断して動物病院を受診しましょう。肉球の怪我や関節の痛み、内臓疾患など、様々な病気が隠れている可能性があります。

特に、散歩中に何度も座り込んだり、呼吸が荒くなったりするようであれば、熱中症や心臓病のサインかもしれません。早めに受診して、適切な診断と治療を受けることが何よりも重要です。

精神的なストレスや恐怖がある場合

犬が特定の場所や物に対して恐怖心やストレスを感じて歩かない時は、その原因から遠ざけることが最優先です。苦手な場所を避けるルートに変更したり、大きな音や見慣れないものから距離を取ったりする工夫が求められます。

無理に引っ張ったりせずに、優しく声をかけ、安心させてあげましょう。もし特定の場所で立ち止まることが多いなら、少し立ち止まって様子を見たり、おやつやおもちゃで気をそらしてあげるのも効果的です。

必要であれば、専門家であるドッグトレーナーに相談し、段階的に慣らすトレーニングを行うことも検討してください。

疲れや気候の問題がある場合

犬が疲れてしまったり、暑さや寒さが原因で歩かない場合は、無理をさせずに休憩を取り入れることが大切です。夏場は早朝や夕方など、比較的涼しい時間帯を選び、冬場は防寒着を着せるなどして体温調節を助けてあげましょう。

散歩の途中で座り込んでしまったら、無理に立たせず、十分に休憩を取らせてあげてください。水分補給も忘れずに行いましょう。

子犬や老犬は特に体温調節機能が不十分なため、散歩の時間や距離を短くするなどの配慮が必要です。

散歩へのモチベーションが低い場合

散歩自体に興味を示さない場合は、散歩をより楽しいものにする工夫が必要です。いつもと違うルートを歩いて新しい匂いを嗅がせたり、公園で一緒に遊ぶ時間を設けたりと、変化をつけて刺激を与えると良いでしょう。

途中で大好きなおやつを与えたり、ボール遊びを挟んだりするのも効果的です。また、犬の運動量に合わせた散歩の量や時間を設定することも大切です。もし運動不足が原因なら、ドッグランなどを利用して思いっきり体を動かす機会を増やしてあげましょう。

犬が散歩中に歩かない時のNG行動

愛犬が散歩中に立ち止まってしまった時、飼い主の焦りから、ついやってしまいがちなNG行動があります。これらの行動は、犬にさらなるストレスを与えたり、問題行動を悪化させたりする可能性があるので注意しましょう。

無理に引っ張る・リードを強く引く

犬が歩かなくなった時にリードを強く引っ張ったり、無理に引きずったりするのは絶対にやめましょう。これは犬にとって非常に不快であり、首や体に負担をかけるだけでなく、飼い主への信頼感を損ねてしまいます。

犬は痛みや恐怖からさらに頑固になったり、散歩自体を嫌いになったりする可能性があります。また、無理な引っ張りは、首輪が気管を圧迫して呼吸困難を引き起こしたり、最悪の場合、頚椎を損傷したりする可能性があるため、危険です。

優しく声をかけ、犬のペースに合わせてあげることが大切です。

怒鳴る・体罰を与える

歩かないことに対して大声で怒鳴ったり、叩いたりといった体罰を与えるのもNGです。犬はなぜ怒られているのか理解できず、ただただ恐怖を感じるだけです。

飼い主に対する恐怖心が募ると、散歩の時間が犬にとって苦痛なものになってしまい、ますます散歩に行きたがらなくなるでしょう。また、体罰は犬の精神的な健康を著しく損ない、攻撃性や臆病さを引き起こす原因にもなりかねません。

無視して放置する

犬が立ち止まってしまっても、「そのうち歩くだろう」と無視して長時間放置するのは避けましょう。特に暑い日や寒い日、雨の日などは、犬の体調に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、不安やストレスを感じている犬にとって、無視されることはさらに状況を悪化させます。犬がなぜ歩かないのか、その原因を探ろうとせず放置することは、犬からのSOSを見逃してしまうことにも繋がります。

立ち止まったら、まずは犬の様子をよく観察し、何が原因か考えて対処してあげてください。

おやつやおもちゃだけで釣る

一時的に歩かせるために毎回おやつやおもちゃで釣るだけの行動は、根本的な解決にはなりません。犬は「歩けばおやつがもらえる」と学習してしまい、おやつがないと歩かない、という状態になってしまう可能性があります。

また、もし身体的な不調が原因で歩けない場合、無理に歩かせることで症状を悪化させてしまう危険性もあります。おやつや遊びは散歩を楽しいものにするための手段の一つですが、それだけに頼るのではなく、犬が安心して散歩を楽しめるような環境を整えることが大切です。

犬が散歩に行きたがらない場合の対処法

犬がそもそも散歩に興味を示さなかったり、行きたがらなかったりする場合は、以下の方法で向き合ってみましょう。

  • 自宅で散歩トレーニングをする
  • 環境を変えてみる
  • 散歩を遊びの延長にする

自宅で散歩トレーニングをする

散歩を嫌がる犬の中には、リードや首輪に慣れていない、あるいは外の環境に不安を感じているケースがあります。まずは自宅でリードや首輪に慣れる練習から始めましょう。

室内でリードを付けて短時間歩く練習をしたり、リードを付けたままおやつを与えたりして、「リード=楽しいこと」と結びつけます。また、「おすわり」「まて」などの基本的なコマンドを自宅で練習し、飼い主の指示に従う習慣を身につけることも、外での散歩をスムーズにする上で役立ちます。

自宅で成功体験を積ませることで、犬は自信を持って外に出られるようになるでしょう。

環境を変えてみる

いつも同じ散歩コースでは、犬も飽きてしまうことがあります。散歩コースを定期的に変えて、新しい匂いや景色に触れる機会を与えましょう。

普段通らない路地裏や、少し足を伸ばして公園や河川敷など、普段とは異なる環境に連れて行ってみるのも良い刺激になります。また、他の犬と自由に交流できるドッグランに連れて行くのも非常に効果的です。

広い場所で思いっきり走ったり、他の犬と遊んだりすることで、犬は心身ともにリフレッシュし、散歩への意欲が向上するでしょう。

散歩を遊びの延長にする

散歩を単なる「歩く時間」と捉えるのではなく、「飼い主と一緒に楽しむ遊びの時間」として演出することで、犬のモチベーションは大きく変わります。散歩の途中で、犬が好きなおもちゃを使った短い引っ張りっこやボール遊びを取り入れてみましょう。

また、地面に隠したおやつを探させるノーズワークも、犬の嗅覚を刺激し、知的好奇心を満たしてくれます。これらの遊びを散歩中に挟むことで、犬は「散歩に行けば楽しいことがある」と認識し、積極的に散歩に行きたがるようになるでしょう。

犬が散歩中に歩かなくなったら病気の可能性はある?

犬が散歩中に突然歩かなくなったり、座り込んだりした場合、状況によっては何らかの病気のサインかもしれません。特に、これまで散歩が好きだった犬が急に歩きたがらなくなったり、特定の足をかばうような仕草を見せたりする場合は、注意が必要です。

考えられる病気や怪我としては、関節炎や変形性関節症、椎間板ヘルニアといった骨や関節の疾患が挙げられます。これらの病気は痛みを伴うため、歩くことを嫌がるようになる可能性が高いです。

犬は痛みを隠す傾向があるため、飼い主が気付きにくいこともあります。少しでも異変を感じたら、自己判断せずに早めに動物病院を受診し、獣医師に診てもらうことが大切です。

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愛犬との散歩は大切なコミュニケーション

愛犬が散歩中に歩かなくなるのは、飼い主にとって心配なことです。しかし、その原因は身体的な不調や痛み、精神的なストレス、疲れ、あるいは単なるモチベーションの低下など、多岐にわたります。

無理に引っ張ったり怒鳴ったりするNG行動は避け、愛犬の様子をよく観察し、それぞれの状況に合わせた適切な対処をすることが何よりも重要です。

もし病気や怪我の兆候が見られる場合は、迷わず動物病院を受診しましょう。また、散歩自体に行きたがらない場合は、自宅でのトレーニングや散歩コースの変更、遊びを取り入れるなど、工夫次第で散歩を楽しい時間に変えられます。

愛犬との散歩は、絆を深める大切なコミュニケーションの時間です。この記事を参考に、愛犬が快適に散歩を楽しめるよう、ぜひ実践してみてください。