何らかの理由で居場所を失った保護犬を新たな家族に迎えることは、尊い命を救うと同時に、新たな絆を築くための大切な一歩です。しかし、保護犬を迎えるまでには、手続きや費用、心構えなど事前に知っておくべきことがいくつかあります。

今回のコラムでは、保護犬を迎える方法や譲渡の流れ、注意点などを詳しく解説します。

保護犬とは?

保護犬とは、飼い主による飼育放棄や迷子など、さまざまな事情で行き場を失い、自治体や民間の動物保護施設などで一時的に保護されている犬のことです。

日本では、年間約2.3万頭の犬が保護されています。中には、病気やケガを負った状態で保護された犬や、衰弱して動けなくなった犬、過去の虐待により人間への恐怖心が強い犬なども含まれます。

保護犬を迎える方法

保護犬を迎える方法には、さまざまな選択肢があります。より良い出会いを得るためには、自分に合う方法を知っておくことが大切です。

以下に、代表的な手段を3つ紹介します。

動物愛護センター

動物愛護センターは、都道府県や市区町村が運営する施設です。動物愛護センターで保護犬を迎えるには、まずセンターに問い合わせて譲渡条件を確認し、講習会や面接を受ける必要があります。

犬はセンターのホームページや譲渡会、里親募集サイトなどで探すことができ、条件を満たせば譲渡が可能です。

譲渡会

譲渡会とは、保護犬と直接触れ合いながら新しい家族を探すためのイベントです。自治体や保護団体が定期的に開催しており、実際に会ったうえで、保護犬の性格や自分との相性を確かめることができます。

参加には事前予約や講習会への参加、面談が必要なケースもあるため、気になる譲渡会を見つけたら、あらかじめ詳細を確認しておきましょう。

インターネットの募集サイト

インターネットの募集サイトでは、保護犬を迎えたい人に向けて、全国の保護団体や個人が譲渡を希望する犬の情報を掲載しています。

犬種や性格、年齢などの条件を絞って検索できるサイトもあり、写真や紹介文から犬の様子を詳しく知ることができるため、実際に会う前にある程度の相性を確認できます。また、自宅でじっくり比較・検討できるのもメリットの一つです。

譲渡の流れとトライアル期間にやるべきこと

保護犬を迎えるには、申し込みから正式な譲渡まで、いくつかの段階を踏む必要があります。なかでもトライアル期間は、犬との相性や新しい環境への適応を確認する大切な時間です。

ここでは、譲渡までの流れと、トライアル期間中に取り組むべきことを紹介します。

譲渡の流れ

保護犬の譲渡は、情報収集、申し込み、面談、飼育環境の確認を経て、一定期間のトライアルを挟んでから正式譲渡となるのが一般的です。犬との相性や新しい環境への適応状況を確かめるために、1~2週間のトライアル期間を設けるケースが多く、問題がなければ譲渡契約などを交わして正式に迎え入れます。

トライアル期間にやるべきこと

トライアル期間中は、犬の体調や行動を注意深く観察し、気になる変化があれば保護団体に報告することが大切です。犬が安心して過ごせるように、クレートなどの落ち着ける場所を用意し、快適な環境を整えます。

先住動物がいる場合はいきなり接触させず、少しずつ距離を縮めて関係を築くようにしましょう。困ったことがあれば獣医師や専門家に相談するのも有効です。

保護犬を迎える前に必要な準備

保護犬との生活を安心して始めるためには、迎え入れ前の準備が必要です。以下の3つのポイントを押さえておくことで、新しい生活をスムーズにスタートできるでしょう。

生活環境を整える

保護犬を迎えるにあたっては、安心して過ごせる住まいづくりが重要です。玄関や窓には脱走防止のための柵を設置し、ケージやクレートなど犬が落ち着けるスペースを整えておきましょう。

誤飲や誤食を防ぐために危険な物は片付け、キッチンへの侵入も柵などで制限しておくと安心です。また、室内には滑りにくいカーペットやジョイントマットを敷き、転倒やケガのリスクを減らす工夫も欠かせません。

飼育グッズをそろえる

ケージやベッド、トイレ用品、食器、フード、首輪、リードなど基本的な飼育グッズをそろえておくことも大切です。さらに、犬の年齢や性格に合わせて、おもちゃやグルーミング用品、ペット保険なども用意しておくと、安心して新しい生活をスタートできます。

家族の理解を得る

保護犬を迎えるには、家族全員の理解と協力が欠かせません。飼育にかかる費用や時間、生活スタイルとの相性などを事前にしっかり話し合い、全員が納得したうえで準備を進めることが重要です。

また、先住動物がいる場合は、保護犬との相性や関わり方にも十分な配慮が求められます。

保護犬との接し方と慣れるまでの注意点

ブリーダーやペットショップの犬とは異なり、保護犬は過去にいろいろな経験をしてきたため、新しい暮らしに慣れるまでに時間がかかることもあります。犬の性格を理解して、無理のないペースで関係を築いていくことが、信頼を得る第一歩となります。

保護犬の性格はさまざま

保護犬の性格は、これまでの経験や生活環境によって大きく異なります。人に慣れている犬もいれば、臆病で警戒心が強い犬もいます。

虐待や捨てられた過去が影響しているケースもあり、初めての環境や人に慣れるまでに時間がかかることも少なくありません。そのため、犬の性格を尊重し、焦らず丁寧に接することが大切です。

信頼関係を築くためのポイント

保護犬との間に信頼関係を築くには、犬のペースを尊重し、安心して過ごせる環境を整える必要があります。毎日同じ声かけやふるまいを繰り返し、一貫した接し方を心がけましょう。

良い反応や落ち着いた様子が見られたら、しっかり褒めてポジティブな経験を積ませてあげてください。時間をかけて丁寧に向き合あうことで、自然と信頼が育まれていきます。

保護犬と幸せに暮らすための心構えとは?

保護犬と幸せに暮らすためには、犬の過去や気持ちに寄り添いながら、長い目で関係を築いていくことが不可欠です。信頼関係を育むためにも、以下のような心構えを持ちましょう。

一緒に成長していく姿勢を持つ

保護犬と幸せに暮らすためには、「教える」「慣れさせる」という一方通行のしつけではなく、互いに歩み寄りながら少しずつ信頼を育てる姿勢が大切です。

過去の経験からトラウマや不安を抱えている犬も多く、飼い主側の理解と配慮が求められます。犬の変化を喜び合いながら、一緒に成長していく関係を築きましょう。

譲渡元との関係を大切にする

保護犬との生活が始まったあとも、譲渡元の保護団体や施設、元の飼い主とのつながりを持ち続けることは大切です。困ったときに相談できるだけでなく、犬の過去や性格に関する情報をもとに、状況に応じた適切な対応がしやすくなります。

保護犬の支援を継続するには?

保護犬を迎える以外にも、支援を継続する方法はたくさんあります。まずは保護犬を取り巻く現状を知り、SNSなどで情報を共有することから始めましょう。

寄付や物品支援、ボランティアへの参加も有効な方法です。保護団体の活動を理解し、自分に合った形で無理なく続けることが、命を守る力になります。

保護犬と幸せに暮らすには正しい迎え方を知ることが大事

保護犬との生活を始めるためには、正しい迎え方を知ることが大事です。犬の個性や過去を理解し、寄り添う姿勢を持って接しましょう。

また、譲渡元との連携や継続的な支援も、保護活動を支える大きな力となります。生活スタイルや考え方に合わせて無理なく関わることが、自分にとっても犬にとっても心地よい関係を築くことにつながります。