「ご飯は食べないのにおやつは食べる」そんな愛犬の行動に戸惑う飼い主は少なくありません。一見ただのわがままにも見えるこの行動には、食事の与え方や習慣、健康状態など、さまざまな要因が関係しています。
本記事では、犬がご飯を拒否しておやつばかりを好む理由や、おやつの食べ過ぎによるリスク、そして具体的な対策などをわかりやすく解説します。愛犬の食事にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
犬が「ご飯を食べない」のに「おやつは食べる」原因

犬が「ご飯を食べない」のに「おやつは食べる」という行動には、いくつかの原因が考えられます。ここでは、犬がご飯を食べずにおやつを好むときに考えられる主な理由を3つご紹介します。
- 味や食感に飽きている
- 選り好みをしている
- 健康上の問題がある
味や食感に飽きている
犬がご飯を食べない理由のひとつに「飽き」が挙げられます。毎日同じドッグフードを与えていると、犬はその味やにおい、食感に慣れてしまい、徐々に興味を示さなくなることがあります。
嗅覚の鋭い犬にとっては、フードの香りは食欲を刺激する重要な要素です。そのため、香りが弱くなったり、湿気てしまったりすると「これは食べたいものじゃない」と感じてしまう場合も。特に、乾燥タイプのフードは酸化しやすく、開封後に時間が経つと風味が落ちるケースも少なくありません。
一方、おやつは香りが強く、食感もバリエーション豊かであることが多いため、犬にとっては「特別で美味しいもの」と認識されやすい傾向があります。その結果、「いつものご飯はつまらないけど、おやつなら食べたい」といった偏りが生じるのです。
選り好みをしている
ご飯は食べないのにおやつは食べるという場合、犬が選り好みをしている可能性もあります。日常的におやつを与えすぎていたり、ご飯を食べなかったときに代わりにおやつをあげたりしている場合に起こりやすい現象です。
犬はとても賢いので、「ご飯を食べなくても待っていればおやつがもらえる」と学習してしまうと、わざとフードを残すようになります。その結果、「おやつの方が美味しい」「ご飯よりおやつを食べたい」というわがままな行動へとつながってしまうのです。
こうした状態を改善するには、ご飯を出したら一定時間内に片付ける、食べなかったからといってすぐにおやつを与えないなど、メリハリのある食事ルールを徹底しましょう。
健康上の問題がある
それまで普通にご飯を食べていた犬が急に食べなくなった場合は、健康上の問題があるかもしれません。たとえば、歯や口の中に痛みや違和感がある場合、硬いドライフードを噛むのがつらくなり、食事を控えることがあります。
また、胃腸の不調などで体調がすぐれないときも、消化に負担のかかるご飯を避けて、香りや味が強くて食べやすいおやつだけを食べるようになることも。特に、シニア犬や持病を持つ犬の場合は「ただのわがまま」と決めつけず、普段と違う様子が見られるときはできるだけ早く動物病院を受診することをおすすめします。
茶屋ヶ坂動物病院|総合診療科のご案内犬がおやつばかりを食べることのリスク

おやつは犬とのコミュニケーションやしつけの手段として便利な一方で、与え方を誤ると思わぬ問題を引き起こすことがあります。ここでは、犬がおやつばかりを食べている場合に起こりやすいトラブルについてご紹介します。
- 栄養バランスが崩れる
- 肥満のリスクが高まる
- しつけに悪影響を及ぼす
栄養バランスが崩れる
犬がおやつばかりを食べていると、栄養バランスが崩れてしまうおそれがあります。おやつはあくまで補助的な食品であり、必要な栄養素が十分に含まれているわけではないからです。
犬の健康を保つためには、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく含んだ総合栄養食を継続して与えることが大切です。しかし、おやつ中心の食生活が続くと、カロリーばかりが過剰になり、栄養が不足してしまう可能性があります。
なかでも、成長期の子犬や持病のある犬、シニア犬などは、栄養の偏りが健康状態に直接影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。
肥満のリスクが高まる
おやつは高カロリーなものが多く、少量でもエネルギーを過剰に摂取してしまう傾向があります。ご飯とは異なり、十分なカロリー計算をしないまま与えられることも多いため、気づかないうちに摂取量が増えやすく、肥満になってしまうリスクが高いです。
特に、運動量が少ない犬や室内で過ごす時間が長い犬は、消費カロリーよりも摂取カロリーが上回りやすく、体重が増加してしまうでしょう。肥満が進行すると関節への負担が増すだけでなく、心臓病や糖尿病などの病気を引き起こすおそれもあります。
しつけに悪影響を及ぼす
おやつの与えすぎは、しつけにも悪影響を及ぼします。「要求すればいつでもおやつをもらえる」と覚えてしまうと、犬は飼い主を自分よりも下に見て行動するようになり、言うことを聞かなくなる可能性があるからです。
本来、おやつは飼い主の指示に従った結果として与える「ごほうび」です。一方、ルールなく与えてしまうと指示に従う必要性を感じなくなり、わがままな行動が増えてしまうケースも。主従関係を崩さないためには、犬のペースではなく、飼い主の判断でおやつを与えることが大切です。
犬がご飯を食べないときの対策

犬がご飯を食べない場合、与え方やちょっとした工夫を行うだけで、食いつきが改善することもあります。ここでは、犬がご飯を食べるようになるための主なおすすめ対策をご紹介します。
- ご飯の与え方を見直す
- トッピングを工夫してみる
ご飯の与え方を見直す
犬がご飯を食べない場合、まずは与え方に問題がないかを見直してみましょう。常に食器にフードが入っている状態や、食べなかったときにすぐにおやつに切り替えてしまうと、犬は「ご飯を食べなくても困らない」と学習してしまいます。
こうした習慣を変えるためには、ご飯を出したら一定時間で下げるようにし、食べなかったとしてもその後すぐにおやつを与えないようにすることが重要です。繰り返すことで、「今食べないともう食べられない」と犬が理解し、ご飯に対する意欲が戻ってくるケースもあります。
また、ご飯の時間を決めて生活リズムを整えることも効果的。「決まった時間に、決まった量を、決まった方法で与える」という一貫性のある行動が、ご飯への関心を高める第一歩になります。
トッピングを工夫してみる
ご飯への関心が薄れている犬には、フードにトッピングを加えて風味や見た目に変化をつけてあげるのも有効です。普段と違う香りや味が加わることで食欲が刺激され、「食べてみよう」という気持ちを引き出しやすくなります。
ただし、やりすぎるとドライフードだけでは食べなくなる可能性もあるため、与える量や頻度には気をつけましょう。あくまでも「ご飯を美味しく食べるためのサポート」として、上手に取り入れていくことがポイントです。
それでも犬がご飯を食べないときはどうすればいい?
ご飯の与え方を見直したり、トッピングを工夫したりしても犬がご飯を食べてくれない場合は、別の原因が隠れている可能性があります。
体調不良やストレス、フードそのものへの拒否反応など、さまざまな要因が考えられるため、改善が見られないときは早めに動物病院を受診し、獣医師などの専門家に相談することをおすすめします。
茶屋ヶ坂動物病院|総合診療科のご案内愛犬の健康のために日々の観察と適切な対応を心がけよう
犬がご飯を食べずにおやつばかり欲しがる行動には、フードへの飽きや選り好み、体調不良など、いろいろな原因が関係しています。そのまま放置していると、栄養の偏りや肥満、しつけへの悪影響につながるおそれもあるため、早めに対処することが大事です。
食事の与え方や環境を見直すだけで改善されるケースもあるため、まずは愛犬の様子をよく観察し、日常の習慣をチェックしてみましょう。









