犬が留守番中に激しく吠え続けたり、物を壊したりする行動には、単なるしつけの問題ではなく分離不安症が関係している場合があります。分離不安症とは、犬が飼い主と離れることに強い不安や恐怖を感じてしまう状態のことです。
本記事では、犬の分離不安症の主な症状や原因、自宅でできる対策や専門家に相談する目安を詳しく解説します。
犬の分離不安症とは?

分離不安症とは、飼い主や家族と離れたときに強い不安や恐怖を感じ、その気持ちが問題行動として表れてしまう状態を指します。
留守番などで1匹になった際、激しく吠え続けたり物を壊したりするほか、強いストレスから下痢や嘔吐といった身体症状が現れることもあります。
これらの症状はわがままや甘えではなく、不安に起因するものであり、早期に気づいて適切に対応することが大切です。
犬の分離不安症の症状
分離不安症の代表的な症状には、次のようなものがあります。
| 破壊行動 | 家具やドア・クッションなどを壊す |
|---|---|
| 無駄吠え | 留守中に長時間吠え続ける |
| 排泄の失敗 | 普段はできるのに留守番中だけ失敗する |
| 自傷行為 | 手足や尻尾を舐め続けたり噛んだりして傷をつくる |
| 身体症状 | よだれを大量に垂らす・嘔吐や下痢をする |
| 落ち着きのなさ | 床を掘る・脱走しようとする |
飼い主が外出の準備を始めただけでそわそわしたり、後をついて回ったりすることもあります。さらに、飼い主が在宅中でも、トイレやお風呂に行くだけで強く不安を示すケースも見られます。
ただし、月齢の低い子犬や迎えて間もない犬の場合は、環境に慣れていないことが原因である場合も少なくありません。成長や環境への適応とともに落ち着くケースもあるため、状況を丁寧に見極めることが大切です。
犬の分離不安症の原因

犬の分離不安症は、さまざまな要因が重なって引き起こされると考えられています。ここでは、犬の分離不安症の主な原因を解説します。
- 生活環境の変化
- コミュニケーション不足や運動不足
- 飼い主への過度な依存
- 社会化不足による影響
- 加齢に伴う変化
- 過去のトラウマ体験
生活環境の変化
引っ越しや赤ちゃんの誕生、新しく犬を迎えるなど、生活環境が変わると犬は不安を感じやすくなります。加えて、飼い主の仕事が変わって留守番の時間が増えたり一緒に過ごす時間が減ったりすると、不安が強まり、分離不安の症状が現れることがあります。
コミュニケーション不足や運動不足
コミュニケーション不足や運動不足も、犬の分離不安症を引き起こす原因の1つです。飼い主との触れ合いやスキンシップが少ないと、犬は安心感を得づらくなります。運動量が足りない状態が続くとストレスがたまりやすくなり、不安が強まることもあります。
飼い主への過度な依存
子犬の頃から常に飼い主と一緒に過ごし、1匹の時間に慣れていない犬は、分離不安を起こしやすい傾向があります。構いすぎや過度なスキンシップが続くと依存が強まり、急に離れた際に大きな不安を感じてしまい、問題行動につながるケースが見られます。
社会化不足による影響
生後0~3ヶ月頃の社会化期に様々な人や犬、環境に触れる経験が少ないと、新しい状況に慣れる力が十分に育ちにくくなります。また、飼い主が何度も変わった、母犬と早くに離れたといった経験も、分離不安症の発症リスクを高めると考えられています。
加齢に伴う変化
高齢犬では、加齢に伴う認知機能の低下や視力・聴力の衰えが影響し、不安を感じやすくなることがあります。周囲の状況を把握しづらくなることで飼い主への依存が強まり、分離不安の症状が現れるケースが見られます。
過去のトラウマ体験
過去に飼い主と離ればなれになった経験があったり、留守番中に雷や地震、花火などで強い恐怖を感じたことがある犬は、分離不安を起こしやすい傾向があります。長期間の不在や不安な出来事がトラウマとなり、飼い主がいない状況への不安を強めてしまうのです。
犬の分離不安症の対策

犬の分離不安症は、日々の関わり方や環境を見直すことで改善が期待できます。具体的には、以下のような対策が効果的だとされています。
- 少しずつ「1匹になる」練習をする
- 声をかけずにさりげなく外出する
- 安心して過ごせる留守番環境を整える
- 適度なスキンシップと運動を心がける
- 専門家のサポートを受ける
少しずつ「1匹になる」練習をする
まずは在宅中に、短い時間から1匹で過ごす練習を始めてみましょう。最初は飼い主の姿が見える距離でも問題ありません。キッチンや洗面所など、犬が立ち入れない場所をつくり、少しずつ距離と時間を延ばしていきます。
「待っていれば戻ってくる」と安心できる経験を積み重ねることが大切です。
声をかけずにさりげなく外出する
外出時は「行ってくるね」などの声かけや過度なスキンシップは控え、できるだけさりげなく出かけるようにします。鍵や靴の音も不安の合図になりやすいため注意しましょう。
留守番を「特別な出来事」だと思わせないためにも、落ち着いた様子で淡々と出かける姿勢が重要です。
安心して過ごせる留守番環境を整える
留守番中に不安を感じにくい環境を整えることも大切です。犬が快適に過ごせる室温を保ち、雨や強風、雷などの予報が出ている場合は、カーテンや雨戸を閉めて光や音をやわらげましょう。
さらに、ラジオやテレビを小さな音でつけておいたり、知育トイを用意したりすると、飼い主がいない間も落ち着いて過ごしやすくなります。
適度なスキンシップと運動を心がける
散歩や遊びなどで適度に体を動かしたり、スキンシップの時間を確保したりすることは、犬の心を安定させるうえでとても大切なポイントです。十分にエネルギーを発散できていると不安が和らぎ、1匹の時間も落ち着いて過ごしやすくなります。
専門家のサポートを受ける
さまざまな対策を行っても改善が見られない場合は、ドッグトレーナーやかかりつけの動物病院に相談するのも方法の1つです。専門的なトレーニングを受けたり、内服薬やサプリメントを取り入れたりすることで、症状の緩和につながるケースもあります。
茶屋ヶ坂動物病院|総合診療科のご案内正しい理解と原因に合わせた対策が大切
犬の分離不安症は、わがままやしつけ不足が原因ではありません。飼い主と離れることへの不安や恐怖が行動として表れている状態です。症状や原因は犬によって異なるため、それぞれに合った対応を考えることが大切です。
焦らず段階的に取り組み、必要に応じて専門家の力も借りながら、愛犬が安心して過ごせる環境を整えていきましょう。











