愛犬がずっと吠えていると、「どこか具合が悪いのか」「何かを訴えたいのか」と気になってしまいますよね。また、マンションや住宅街の場合は近隣への迷惑も懸念されます。犬が吠えるのは本能的な行動ですが、ずっと吠え続ける場合は、背景に何らかの理由が潜んでいる可能性があります。
本記事では、犬がずっと吠える理由や、それぞれのケースに合わせた対処法、注意点などをわかりやすく解説します。
犬がずっと吠える理由とは？
犬が吠えるのは本能的な行動ですが、その背景にはさまざまな理由があります。吠える理由を正しく理解することは、適切な対応につながる重要なポイントです。ここでは、犬がずっと吠える場合の主な理由をご紹介します。
- 要求している
- 警戒している
- 興奮している
- ストレスを感じている
- 不安を感じている
- 遠吠えをしている
要求している
犬が吠え続ける大きな理由のひとつが「要求吠え」です。おやつが欲しい、散歩に行きたい、遊んでほしいなど、犬は自分の欲求を伝えるために吠えます。
飼い主がそのたびに応じてしまうと、犬は「吠えれば願いが叶う」と学習し、吠える行動がエスカレートしてしまいます。この繰り返しにより要求吠えが習慣化し、常に吠えて要求を伝えるようになるのです。
警戒している
外部からの刺激に反応して吠える「警戒吠え」も、犬によく見られる行動です。警戒吠えとは、見慣れない人や犬、物音などを「危険」と感じ、飼い主や自分を守ろうとする本能的な反応のことを指します。
特に玄関のチャイムや来客、散歩中にすれ違う人や他の犬は警戒の対象になりやすく、吠えることで「注意してほしい」というサインを送っているのです。
さらに、吠えたあとに対象がいなくなると、犬は「自分が吠えたから危険がなくなった」と勘違いし、「吠えれば追い払える」と学習してしまいます。このような経験を繰り返すうちに、警戒吠えが習慣化してしまうことがあります。
興奮している
犬が吠える理由には、不安や要求のほかに「興奮吠え」もあります。嬉しさや期待感が高まったときに見られる行動で、飼い主の帰宅や遊びの最中などに起こりやすいのが特徴です。
また、散歩などの前に気分が盛り上がると、吠えることでその感情を表すこともあります。一見元気で微笑ましい様子に見えますが、興奮が行き過ぎると落ち着きを失い、無駄吠えへとつながってしまうため注意が必要です。
ストレスを感じている
犬は長時間の留守番や運動不足、刺激の少ない生活が続くと、不満や退屈さから吠えて気持ちを発散しようとします。このように、ストレスが溜まることも犬が吠え続けるひとつの原因です。
また、環境の変化や大きな音などによる不安もストレスの原因となります。こうした状況が続くと、吠えることで気持ちを紛らわせるようになり、結果的に「ストレス吠え」につながる恐れがあるため、ストレスを与えないようにケアしてあげましょう。
不安を感じている
犬が吠え続ける理由として、不安からくる「不安吠え」も挙げられます。飼い主と離れて過ごす時間が長いと、分離不安による寂しさや心細さから吠えてしまうことがあります。
また、雷や花火、工事の騒音といった大きな音は犬に強い恐怖や不安を与えるため、過剰に反応して吠えるケースも。このような不安を頻繁に経験すると、犬は環境そのものに敏感になり、些細な刺激でも吠えるようになってしまいます。
遠吠えをしている
「遠吠え」も、犬がずっと吠え続ける理由のひとつです。もともとは犬の祖先であるオオカミの習性に由来し、群れの仲間を呼び寄せたり縄張りを示したりするための本能的な行動とされています。
現代の犬では、救急車やパトカーのサイレンなどに反応して遠吠えすることが多いほか、留守番中の寂しさや不安を表す手段としても見られることもあります。遠吠えは自然な行動のひとつですが、頻繁に繰り返される場合は不安やストレスを表すサインの可能性もあるため注意が必要です。
犬がずっと吠えるときの対処法
犬がずっと吠えるときの対処法は、理由によって異なります。ここでは、ケースごとの対処法を詳しく解説します。
- 「要求吠え」の場合
- 「警戒吠え」の場合
- 「興奮吠え」の場合
- 「ストレス吠え」の場合
- 「不安吠え」の場合
- 「遠吠え」の場合
「要求吠え」の場合
「要求吠え」に対しては、すぐに要求をかなえるのではなく、犬が落ち着いてから対応することが大切です。吠えている最中におやつや遊びに応じてしまうと、犬は「吠えれば願いが叶う」と学習し、行動が強化されてしまいます。
無視を続けるのは飼い主にとって根気が必要ですが、吠えるのをやめた瞬間に褒めたりご褒美を与えたりすることで、「静かにすればいいことがある」と教えることができます。
「警戒吠え」の場合
「警戒吠え」への対応では、犬を頭ごなしに叱るのではなく、安心できる環境を整えることが大切です。玄関のチャイム音に反応する場合は、まず小さな音量から聞かせ、落ち着いていられたら褒めてご褒美を与えることで「音＝良いこと」と結びつけていきます。
来客そのものに吠える場合は、友人などに来客役をしてもらい、距離をとりながら落ち着かせる練習を繰り返すと効果的です。散歩中にすれ違う人や犬へ吠える場合は、十分な距離を保ちながらアイコンタクトや「おすわり」などに集中させ、静かにできたらしっかり褒めてあげましょう。このように、ポジティブな経験を積み上げていくことが大切です。
「興奮吠え」の場合
「興奮吠え」を改善するには、犬が過度に盛り上がらない環境づくりが必要です。飼い主の帰宅時や来客時に吠える場合は、すぐにかまわず落ち着くまで待ち、静かになったら褒めて接するようにします。
散歩や遊びの前に興奮して吠えるときは、吠えている間は行動を中断し、落ち着いたら再開することで「静かにすれば楽しいことが続く」と学習させることができます。
「ストレス吠え」の場合
「ストレス吠え」の場合は、犬が感じているストレスを取り除くことが最優先です。特に運動不足や退屈は、犬にとって大きなストレスになります。毎日の散歩や遊びでしっかり発散させるようにしましょう。
また、知育玩具や噛むおもちゃを用意してあげることで、留守番中も退屈せずに過ごせます。環境の急な変化や大きな音など、犬に不安を与える要素をできるだけ避けるのも、ストレス軽減には効果的です。
犬が落ち着けるスペースを整えることが、改善への近道になります。
「不安吠え」の場合
警戒吠えと同様、「不安吠え」の場合も、犬が安心できる状況を作ってあげることが改善のポイントです。留守番が苦手な場合は、いきなり長時間留守にするのではなく短い外出から始め、少しずつ時間を延ばしていくことで分離不安を緩和できます。
雷や花火など大きな音が怖い犬には、フリーの音源などを活用し、音を弱めて聞かせながらご褒美を与えるなど、段階的に慣らす練習が役立ちます。
「遠吠え」の場合
遠吠えは犬にとって自然な行動ですが、頻繁に吠える、長時間続くなどの場合は対策が必要です。音に反応する場合は、警戒吠えや不安吠えの場合と同じく、音源を小さな音から聞かせて慣らす練習が効果的とされています。
また、寂しさや不安からの遠吠えには、留守番に慣れるトレーニングや退屈を解消できる環境づくりが役立ちます。
犬がずっと吠えるときのNGな対処法
愛犬が吠え続けていると、つい焦ってやめさせようとしてしまいますが、NGな行動をしてしまうと逆効果になりかねません。以下のような対処は避けるべきです。
- 大声で叱る・怒鳴る
- 体罰をする
- 名前を呼んで叱る
大声で叱る・怒鳴る
飼い主が大きな声を出すと、犬は「飼い主も一緒に興奮している」「構ってくれた」と勘違いし、さらに興奮して吠え続けてしまうことがあります。または、恐怖心から吠えが悪化したり、飼い主との信頼関係を損なう原因にもなるため、注意が必要です。
体罰をする
叩いたり、体を押さえつけたりする行為は、犬に恐怖と苦痛を与えるだけで、なぜ叱られているのかを理解させることはできません。恐怖心から飼い主さんを威嚇するようになったり、別の問題行動を引き起こしたりする可能性があるため、絶対に行ってはいけません。
名前を呼んで叱る
叱るときに名前を呼ぶと、犬は「自分の名前＝嫌なこと」と結びつけてしまい、名前を呼ばれることにネガティブな印象を持つようになってしまいます。叱るときは「ダメ」「いけない」など、短い言葉で伝えましょう。
犬がずっと吠えるのは病気が原因の場合もある
理由もないのに犬がずっと吠え続ける場合、背景に病気が隠れているケースもあります。たとえば高齢犬では、認知症によって昼夜の区別がつかなくなり、夜間に吠えてしまうケースが見られます。
また、関節炎や内臓疾患による痛みや不快感を訴える手段として吠え続けるケースもあるため注意が必要です。気になる状態が続く場合は、早めに動物病院へ相談しましょう。
茶屋ヶ坂動物病院｜総合診療科のご案内犬が吠える理由を理解して正しく対応しよう
犬がずっと吠えるのには、さまざまな理由があります。なかには病気が関係している場合もあり、単なる問題行動と決めつけてしまうのは危険です。
大切なのは、吠える原因を見極めて、適切な方法で対応することです。頭ごなしに叱るのではなく、安心できる環境づくりや適切なトレーニングを通じて、犬が落ち着いて過ごせるようにサポートしてあげることが、無駄吠えの改善につながります
