チョコレートやネギなど、犬にとって有害な食べ物は多いですが、バナナには毒性がないため、安全に食べさせることができます。ただし、与えすぎや個体差による消化不良のリスクはあるため、与える際には十分な注意が必要です。

そこで今回は、バナナの成分を詳しく解説するとともに、与え方のポイントと注意点を詳しくお伝えします。

バナナは犬が食べても大丈夫!

バナナは、基本的に犬に与えても問題ない果物です。バナナには、犬にとって毒性のある成分を含んでいないため、おやつとして食べさせることに問題はありません。適度にバナナを与えることで、栄養補給や消化促進としても効果的です。

しかし、摂りすぎると健康に影響を与える成分もあるため、まずは何が含まれているのかを確認していきましょう。

バナナに含まれる成分

バナナには、主に以下の成分が含まれています。

糖質

バナナは果物の中でも糖質が豊富で、優れたエネルギー源として知られています。100gあたり約21gの糖質を含み、その多くは主にショ糖とデンプンです。

また、1本あたりのカロリーがおよそ90kcalと比較的低いため、食べ過ぎなければ肥満になる心配はないでしょう。ただし、糖尿病やすでに肥満傾向のある犬の場合は、与える量について十分に注意しなければなりません。

ビタミン

バナナには、以下のようにビタミンB群が多く含まれています。

  • ビタミンB6:たんぱく質の代謝を助け、髪や皮膚の健康や神経の働きを正常に保つ
  • ナイアシン:エネルギー代謝をスムーズにし、粘膜・皮膚の健康を助ける
  • ビタミンB2:脂質の代謝を助けるビタミンで、不足すると口内炎になりやすい
  • 葉酸:赤血球をつくるために必要で、妊娠中の犬や幼犬の成長にも重要

これらのビタミンは、加熱や日光によって損なわれやすくなるため、調理せずに与える、日光を避けて保存するといった工夫が必要です。

ミネラル

バナナには、次のようなミネラルも含まれています。

  • カリウム
  • マグネシウム
  • カルシウム

中でもカリウムは、100gあたり360mg程度と最も多く含まれています。カリウムは、体内の水分バランスや筋肉の機能、神経伝達に重要な役割を果たします。

ただし、腎機能に問題がある場合は、高カリウム血症になる恐れがあるため、注意しなければなりません。犬が腎臓病を患っているケースでは、バナナを与える前に、獣医師に相談することをおすすめします。

食物繊維

バナナには不溶性食物繊維が多く含まれており、便のかさを増やしたり、腸内環境を整えたりする効果が期待できます。100gあたり1.1gと、レタスと同じくらいの量が含まれていますが、乾燥させることで100gあたり7gの食物繊維の摂取が可能になります。

犬においても、食物繊維が便通の助けになることがありますが、与えすぎると軟便や下痢を招くため注意が必要です。

犬が食べてもよいバナナの量

適量であれば、バナナは犬にとって安全なおやつです。しかし糖分が多いため、過剰摂取すると肥満や消化不良の原因になってしまいます。

食べる量の目安は体格によって異なるため、以下の目安を参考に与えるとよいでしょう。

  • 5kg未満(子犬や超小型犬):10gまで
  • 5〜10kgサイズ(小型犬):20gまで
  • 10〜20kgサイズ(中型犬):30gまで
  • 20kg以上(大型犬):50gまで

これは、あくまでも時々与える際の上限目安になるため、毎日あげるのであれば、目安よりも控えめにする必要があるでしょう。

バナナの加工食品もOK?

バナナチップスやバナナ味のお菓子、バナナジュースなど、市販の加工食品は犬に適していません。これらには、添加物、砂糖、塩分、保存料が含まれていることが多いため、健康面でのリスクがあります。

とくに、揚げたバナナチップスは脂質が高く、肥満や膵炎の危険性を高めるため、与えないほうがよいでしょう。また、バナナ風味のヨーグルトやパンなどは、香料や人工甘味料を含むことがあり、犬にとって有害な成分が含まれているケースがあるため注意が必要です。

一方で、砂糖・添加物不使用のバナナケーキやバナナピューレなど、手作りで加工したものは、適量であれば与えても問題ありません。ペット用のレシピを参考にして作ったバナナのおやつなら、安心して食べさせられるでしょう。

犬にバナナを与えるときの注意点

体に良いからと犬にバナナをあげても、間違った与え方をすれば、かえって害になりかねません。バナナを与える際は、以下の5つの点に注意する必要があります。

  • アレルギーに注意する
  • 皮はあげない
  • カットして与える
  • カロリーの摂り過ぎに注意する
  • 持病がある場合は医師に相談する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

アレルギーに注意する

犬にも人間と同じように食物アレルギーがあり、バナナに対して反応を示す犬もごくまれに存在します。アレルギーの主な症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 皮膚のかゆみ
  • 発疹
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 目や耳の赤み など

初めてバナナを与える場合は、小さじ半分程度のごく少量からスタートし、数時間〜1日はしっかり様子を観察することが大切です。ほかの果物でアレルギー反応を起こした経験がある犬は、バナナにも反応する可能性があるため、とくに慎重に進めてください。

万が一異変を感じた場合は、速やかに与えるのを中断し、動物病院に連絡しましょう。

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皮はあげない

バナナの皮は、犬にとっては柔らかそうに感じますが、繊維質が多く消化しにくいため、腸に詰まる恐れがあります。とくに小型犬の場合、バナナの皮がそのまま腸内にとどまることで腸閉塞を引き起こすリスクが生じます

また、皮の表面には農薬やワックスなどの残留物が付着している可能性もあるので、与えるべきではありません。バナナの栄養は可食部に多く含まれているため、必ず皮をむいて、中身だけを与えましょう。

カットして与える

犬はよく噛んで食べる動物ではないため、バナナをそのまま与えれば、ほぼ丸のみする可能性があります。とくに子犬や小型犬、老犬は、細かくカットするか、フォークで潰すなどして与えると安心です。

また、皮をむきながら手でちぎって与えていると、皮を狙って食べてしまう可能性があるので、カットしたバナナを餌皿に入れてあげましょう。ミキサーにかけて、バナナジュースのようにするのも一案です。

カロリーの摂り過ぎに注意する

バナナは自然な甘さと栄養価の高さから健康的なイメージがありますが、糖質とカロリーもそれなりに高いため、与えすぎに注意しなければなりません。犬種や年齢によって必要なカロリーは異なりますが、バナナのようなおやつは、必要なカロリー1日分に対して10%以内が目安とされています。

1日に必要なカロリー(DER:Daily Energy Requirement)は、以下の式を用いて大まかに計算することができます。

安静時に必要なカロリー(RER:Rest Energy Requirement) (kcal)= 60×体重(kg)
DER (kcal) = RER (kcal)×係数

係数は、年齢、避妊去勢手術の有無、肥満傾向など、犬のライフステージに応じて変わります。

  • 生後4ヶ月未満:3.0
  • 生後4~9ヶ月:2.5
  • 生後10~12ヶ月:2.0
  • 成犬:1.8
  • 避妊・去勢済みの成犬:1.6
  • 高齢:1.4
  • 肥満傾向:1.4

犬の健康状態などによっても異なるため、正確な必要カロリーは、かかりつけ医に確認しましょう。

持病がある場合は医師に相談する

持病を抱えている犬の場合は、バナナの摂取について必ず獣医師に相談してください。たとえば、バナナに多く含まれるカリウムは、腎臓や心臓疾患を持つ犬には制限が求められる成分です。

また、カルシウムやマグネシウムといったミネラルは、尿路結石の原因になる可能性があるため、予防を指導されている犬に与えてはいけません。バナナ自体に毒性はないものの、犬の体調によっては有害になるので、自己判断で与えるのはやめましょう

日常の治療や食事制限に影響が出ないよう、必ず医師の指示を仰ぎ、必要に応じて代替できる食材などを教えてもらうと安心です。

犬にバナナを与える際は適量を意識しよう

バナナには豊富な栄養素がたくさん含まれているため、犬の健康に対しても有効に働くことが期待できます。たとえば、腸内環境を整えたり、粘膜を強くしたりといったケースが考えられますが、糖分が高いため与え過ぎには注意が必要です。

また、皮は消化しにくいので、絶対に食べさせてはいけません。このほか、市販のバナナ加工食品には犬に有害な成分が入っている可能性があるため、十分に気をつけてください。

摂り過ぎに注意すればおやつとして与えられるバナナですが、さまざまなミネラルが含まれるため、持病がある場合はまずは獣医師に相談する必要があります。