犬が喉を鳴らすという行動には、どのような理由やサインがあるのか気になる人も多いのではないでしょうか。甘えているように見えることもあれば、苦しそうに聞こえることもあり、愛犬の健康や気持ちが気になると思います。

本記事では、犬が喉を鳴らすときの考えられる理由や、注意すべき病気の可能性などについて詳しく解説します。愛犬が喉を鳴らすことに隠された感情やサインを理解し、適切な対応ができるように、ぜひ最後までご覧ください。

犬が喉を鳴らす理由【感情編】

犬が喉を鳴らす時は、飼い主に対して何らかの感情を表現したり、コミュニケーションを取ろうとしたりといったサインを出していることが考えられます。具体的には、以下のような理由で喉を鳴らすことがあるでしょう。

喜びや満足感

犬が喉を鳴らす最もポジティブな理由の一つは、喜びや深い満足感を表現している場合です。これは、飼い主に優しく撫でられている時や、大好きなおやつをもらっている時、あるいは暖かい場所でリラックスしている時などによく見られます。

猫の「ゴロゴロ」音に似ていると表現されることもあり、体全体が緩んで目を細めたり、尻尾をゆっくり振ったりする行動を伴うことが多いです。この喉鳴らしは、愛犬が心から安心し、幸福を感じているサインであり、飼い主さんへの深い信頼と愛情を示しているといえるでしょう。

要求やアピール

犬は、何かを要求したり、飼い主の注意を引いたりするために喉を鳴らすことがあります。例えば、お腹が空いてご飯が欲しい時、散歩に行きたい時、遊びに誘いたい時などに、飼い主のそばに来て喉を鳴らし、飼い主の反応を伺うことがあります。

これは、過去にその行動が要求を満たすことに繋がった経験がある場合に、学習されて繰り返される行動です。この場合の喉鳴らしは、ややはっきりとした音であることが多く、鳴らした後で要求している対象(フードボウルを見る、リードの前で座るなど)に目を向けるなどの行動が伴うこともあります。

不安やストレス

喜びとは対照的に、不安やストレスを感じている時に喉を鳴らすケースも多いです。これは、自分自身を落ち着かせようとするカーミングシグナルの1つである可能性も考えられます。

例えば、雷の音や花火の大きな音に怯えている時、見知らぬ場所や人に遭遇して緊張している時などに低くうなるような、あるいは小刻みに喉を鳴らすことがあります。耳が後ろに倒れていたり、尻尾が下がっていたり、体を小刻みに震わせるなどの他のストレスサインを伴う場合は、この可能性が高いでしょう。

警戒や威嚇

警戒や威嚇する際にも喉を鳴らすことがあり、この場合は低く唸るような音を出すことが多いです。例えば、見知らぬ人や犬が縄張りに近づいてきた時、自分の大切なおもちゃを取られそうになった時などに、警戒や威嚇の感情で喉を鳴らすことがあります。

この行動には、耳を伏せる、体を硬直させる、尻尾を低く振る、歯を剥き出しにするなどの、明確なボディランゲージが伴うことがほとんどです。この場合の喉鳴らしは、エスカレートすると吠えたり噛みついたりといった攻撃行動に繋がる可能性があるため、適切な対応を取る必要があります。

犬が喉を鳴らす理由【身体編】

感情的な理由だけでなく、以下のように身体的な理由で喉を鳴らしている可能性も考えられます。

空腹

犬は空腹の時に、ゴロゴロと喉を鳴らすことがあります。これは、食事への期待感や早く食事にありつきたいという生理的な欲求が表れているサインです。

この場合の喉鳴らしは、食事の時間が近づくと頻繁になったり、食事を与えるとすぐに止まったりする傾向があります。通常は心配いりませんが、過度な空腹が続かないよう、適切な時間に食事を与えましょう。

気管虚脱

気管虚脱は、犬の気管が変形して潰れてしまい、空気の通り道が狭くなる病気です。特に小型犬や高齢犬に多く見られます。気管が狭くなることで、呼吸の際に空気がスムーズに通らず、喉から「ガーガー」という音や、あるいは「ブーブー」といった独特の音が出ることがあります。

これは、喉を鳴らしているように聞こえる場合が多いです。症状が悪化すると、咳がひどくなったり、呼吸困難に陥ったりすることもあります。興奮時や運動後に症状が出やすい傾向があり、愛犬が苦しそうにしている場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

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その他の身体的な異常

犬が喉を鳴らすのは、上記以外にも何らかの身体的な異常や不快感、痛みを伴っているサインである可能性があります。例えば、喉の奥に異物が詰まっている、扁桃炎や咽頭炎などの炎症がある、口腔内に痛みがあることなどが考えられます。

これらの場合、喉を鳴らす以外にも、食欲不振、元気がない、咳、嘔吐、呼吸困難といった他の症状を伴うことが多いです。いつもと違う喉鳴らしや、体調不良のサインが見られる場合は、早めに獣医師に相談しましょう。

犬が喉を鳴らす際に考えられる病気

犬が喉を鳴らすことは、何らかの病気のサインかもしれません。具体的には、以下の病気と関係があると考えられます。

ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)

ケンネルコフは、ウイルスや細菌が原因で引き起こされる犬の呼吸器感染症です。主な症状は、乾いた激しい咳ですが、この咳に伴って「ガーガー」という喉を鳴らすような音が出ることがよくあります。

これは、喉や気管に炎症が起きているために、呼吸の際に異常な音が生じるためです。他の犬との接触が多い場所(ドッグラン、ペットホテルなど)で感染しやすく、発熱や鼻水、食欲不振などを伴うこともあります。

子犬や高齢犬、免疫力の低い犬は重症化しやすい傾向があるため、注意が必要です。

軟口蓋過長症

軟口蓋過長症は、口の奥にある柔らかい部分である軟口蓋が、正常よりも長く伸びてしまい、それが喉の奥に垂れ下がって、空気の通り道を部分的に塞いでしまう病気です。特に、ブルドッグ、パグ、フレンチブルドッグ、シーズー、チワワなどの短頭種に多く見られる先天性の病気です。

この状態になると、呼吸の際に「ガーガー」「ブーブー」「ズーズー」といった、まるで喉を鳴らしているかのような、特徴的な呼吸音を発するようになります。寝ている時のいびきがひどくなったり、興奮時や運動後に呼吸が苦しそうになったり、舌が青紫色になるチアノーゼを起こしたりすることもあります。

症状が悪化すると、熱中症になりやすくなったり、失神することもあるため、早期の診断と治療が非常に重要です。

喉頭麻痺・喉頭炎

喉頭麻痺は、喉頭(のど仏のあたり)にある声帯を動かす神経が麻痺することで、呼吸の際に声帯が適切に開かなくなり、空気の通り道が狭くなる病気です。これにより、吸気時に「ハーハー」という大きな呼吸音や、荒い喉鳴らしのような音が出ます。

運動時や暑い時に症状が悪化しやすく、ひどくなると呼吸困難に陥る危険もあります。また、喉頭に炎症が起きる喉頭炎も、同様に喉を鳴らすような音の原因となることが多いです。

これらの疾患は、食欲不振や嘔吐を伴うこともあるため、注意深く観察し、異変があればすぐに動物病院を受診してください。

動物病院で受診するべき判断基準

犬が喉を鳴らしている時に動物病院を受診すべきかどうか迷った際の判断基準は、その音の種類や、他の症状の有無、持続時間、愛犬の様子など、複合的に判断することが重要です。

  • ずっと喉を鳴らしている
  • 1日に何度も同じ喉を鳴らすようになった
  • 呼吸が苦しそう
  • 咳や嘔吐を伴っている
  • 元気がなくぐったりしている

上記のような様子が見られた時は、何らかの不調によって喉を鳴らしている可能性が考えられます。愛犬の健康を守るためには、異常の早期発見が非常に重要ですので、少しでも不安を感じたら動物病院で受診することをためらわないでください。

喉を鳴らす理由を理解して適切に向き合おう

犬が喉を鳴らす行動は、喜びや甘えといったポジティブな感情から、不安、警戒、さらには病気のサインまで、実に多様な意味を持っています。日頃から愛犬がどんな時に、どのような音で喉を鳴らすのかを観察することで、その背後にある感情や体調の変化を読み取ることができるでしょう。

特に、呼吸が苦しそうに見える、咳や嘔吐を伴う、元気がない、あるいは喉鳴らしが長時間続くといった場合は、身体的な異常が隠れている可能性もあります。少しでも異変を感じたら、ためらわずに動物病院を受診しましょう。

愛犬の出す音に耳を傾け、適切な対応をすることで、愛犬の健康と幸せを守り、より深い絆を築いていきましょう。